皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区にて活動中の行政書士、近田知成です。
記事投稿第83回目記事投稿となる今回のテーマは、【遺言書と祭祀財産】です。
多くの方が都会へと移住され、管理者のいない地方の墓が荒れ始めているという話を最近よく耳にするようになりました。
遠方にある先祖代々のお墓となれば、檀家の関係や地縁などもあり、おいそれと【墓じまい】や【改葬】手続きを行うことも難しいでしょうし、苦心されている方も多いと思います。
また、居住地より比較的近場にあるお墓の管理であっても、継続する管理費の問題やかけられる手間・時間等に限りもあり、現在の管理者のご苦労様は少なからぬものだと推測されます。
ご自身が動けるうちは可能な範囲で(例えば、年に2回お彼岸の時期にお墓参りをする、又は別途時間を設けて掃除をしに行く・・・等)供養・管理を行うとは思われますが、ご自身亡き後の管理の引継ぎは大きな懸念点となるでしょう。
一方で、ご家庭内にある仏壇や家系図等の【祭祀財産】の管理を今後どのように承継していくか?・・・このような問題を抱えておられる方もいらっしゃると思います。
お子様がおられる家庭であっても、家族間で引継ぎのトラブルを回避する事は容易ではありません。(誰が管理するのか?管理費を誰が支出するのか?・・・等が想定されます。)
その為、事前に何らかの形で予防策を講じ、円滑にその引継ぎを行うのが理想的と言えます。
お墓・仏壇等【祭祀財産】の承継を目的とする【遺言書】の作成は、上記のようなケースに対する解決の一つの選択肢となり得ます。
祭祀財産は第一にⒶ【被相続人の指定により】決まり、次いでⒷ【慣習(代々長男が受け継いでいる等)】そしてその慣習がない場合にはⒸ【家庭裁判所の審判】により決定する流れとなっています。
つまり、Ⓐ【祭祀財産の承継者を被相続人において指定】しておく事は、法律で定められた遺言事項の1つに入りますから、生前の最終意思として残しておけば相続人の方々にとっての道標ともなるでしょう。
ただ、少なくとも管理行為自体は託された方の内心に基づき行われるのが実際ですから、その行為に対する幾つかの配慮を欠くことなく文面に遺言者の意思を反映させる必要があると思われます。
では、その配慮と記述のポイントとはどのような点にあるのでしょうか?
下記にてご紹介したいと思います。
ポイント①【無償ではなく管理費用手当て込みで承継者を指定する】
【祭祀財産】管理には当たり前ながら費用がかかります。(年間の管理維持費を墓地経営者側へ支払う等)
また、祭祀財産の管理費用支払いについて相続人間で揉め事となる事態も避けなければなりません。
その為、管理者の実費負担を軽減させるべく、一定の【手当て込みの承継】も検討に値すると考えられます。
祭祀の為使用される費用は、別途口座管理された預貯金をあてる方法が相続時に無用な混乱を避ける意味で良策かと思われます。そして、勿論この費用に関する記述も【遺言書】の文面に載せる必要がある事も忘れてはいけません。
ポイント②【『祭祀主宰者』または『祭祀を主宰する者』と記述する】
仏壇・仏具・家系図や神具、お墓などを承継し管理供養する者を【祭祀主宰者】と言います。
【遺言書】にその名のを示すには、【○○を祭祀主宰者として指定する。】又は、【○○を祭祀を主宰するものとして指定する。】といった形で明記するようにしましょう。
ポイント③【遺言執行者を指定しておく】
上記ポイント①のように管理費込みでの承継をお考えならば、【遺言執行者を指定】しておく方が無難かもしれません。何故なら、もし管理費のみ相続され肝心の【祭祀主宰者】としての管理実態が伴わなければ、後に相続人間トラブルとなる可能性が出て来るからです。
【遺言執行者】を合わせ指定しておく事で心理的にも、実態的にも【祭祀主宰者】への楔となり得ると思われます。
関連URL:【遺言執行者とは?】
この3つのポイント以外にも、時間と手間を掛けられそうならば、一度相続人全員へ【遺言者】自身の想いや実情、祭祀財産を承継させる上での管理費の考え方やその事について理解を求めたい旨・・・等をお話ししておく方が良いかと思います。
家族全体が【祭祀財産の承継とその後行われる供養】に対し真っ新な気持ちで向き合える環境整備も【遺言者】側に求められる配慮なのかもしれません。
関連URL:【遺言作成の適齢期】 【遺言における付言事項】
コメントを残す