皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区にて活動中の行政書士、近田知成です。
記事投稿85回目となる今回のテーマは、【認知症の方が相続人にいる場合の相続手続き】についてです。
日本国内では、超高齢社会を迎え相続の場面において【認知症の方が相続人】となるケースも多く見受けられるようになりました。
また、40~60歳代に発症する【若年性認知症】の発症も珍しくは無く、判断能力が求められる相続、特に【遺産分割】の現場では関係者を含め混乱してしまう可能性も考えられます。
遺産分割協議は【相続人全員】によりなされる事がその効力発生の前提であり、たとえ【精神上の障がいにより】判断能力に疑義がある方が当事者だとしても、その方の存在(又は法律的に認められたその方の代理人)を欠いて進める事は出来ません。
また、相続人の中に認知症の方がおられる場合、他の相続人が当該認知症の方を慮り、その方に有利となる財産分けを独自に行ったとしても、その決定プロセスに認知症の方当人(この場合では法律で認められた代理人の方)の了承がなければ問題となってしまいます。
相続人全員参加による協議が必要なものの、その当該相続人につき【認知症発症による判断能力の疑義が存在する・・・】このジレンマを法律上適切な型で乗り越えるにはどのようにすれば良いのでしょうか?
上記のようなケースでは、先ず当該認知症の方に【成年後見人】が就いているか否かで判断を行います。
成年後見人が就いている場合、その【成年後見人が相続人】でなければ(第三者後見人など)、ご本人を代理し遺産分割協議に参加することが出来ます。
(ただし法定後見ではこの場合、該当する後見類型により家庭裁判所へ追加の申し立て(代理権付与の)が必要となるケースも考えられますし、任意後見の場合では、代理権項目に【遺産分割協議に関する事項】が記載されている事が必要となるでしょう。)
また、成年後見人がご本人を代理して遺産分割協議を行う際には、ご本人に【不利益となる財産分け】については明確に否定・拒絶する事となる点を、留意事項としてお見知り置き下さればと思います。(後見人はご本人の法定相続分を絶対的に確保する事が求められるのです。)
上記の【成年後見人が相続人】の場合には、ご本人と成年後見人の利益が相反する関係となりますので、後見監督人が就任していれば当該後見監督人がその職(ご本人を代理して遺産分割協議を行う)にあたるか、遺産分割協議を進める為の【特別代理人】を家庭裁判所に選任してもらう事となります。
次に、成年後見人が選任されていない場合ですが、相続人となるご本人の【認知症の進行度合い】によりその判断が分かれるかと思います。
認知症の方全てが遺産分割協議に必要な意思能力を有していないわけでは無く、この点十分な確認が必要である事は言うまでもありません。(主治医の診断による判断能力の確認作業を行う・・・等)
ただし、軽度認知症の方であっても日々その精神状況には【波】がありますし、また、病状悪化速度により確たる意思能力保有の判断がつかない可能性も残ります。
このような不安定状況の中で、遺産分割協議の成立を突き詰めた場合、最終的には【成年後見制度の利用】を考えなければならないかもしれませんが、当該制度の趣旨からは幾分乖離している感も否めません。
何故なら、当該制度は【他の相続人の遺産分割協議を済ませてしまいたいという想い】を実現する為に利用するものでは無く、【ご本人の財産管理・身上監護上必要であるから】利用するものだからです。
かなり込み入った事態とはなりますが、遺産分割協議自体には期限はありませんし、相続人間の考え方いかんによっては所謂【法定相続分による塩漬け】も選択肢に入ってくるのかもしれません。
遺産分けの解決方法として、相続人全ての方の希望が等しく100%叶えられるのであればそれに越した事はありませんが、相続人の中に認知症の方がおられる場合には、通常の遺産分けプラスαの【当該認知症の方に対する一定の配慮】が求められると思います。
相続人に引き継がれる財産の種類、相続税課税の有無、引継ぎの方法、相続人間の意思疎通・・・と、考える事も実際に動く事も多いのが【相続手続き】です。
【認知症】に伴う遺産分割協議の進行には【成年後見人】と【他の相続人】の間における円滑なコミュニケーションが不可欠であると言えるのではないでしょうか。
関連URL:【遺産分割の方法について】 【遺産分割協議書作成の要点】
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