【遺言書と遺留分の関係】

皆さん、こんにちは。横浜市港南区で活動中の行政書士 近田知成です。

第69回目記事投稿となる今回のテーマは【遺言書と遺留分の関係】です。


遺言書生前の最終意思であり、相続人にとって財産上少なからぬ影響を与える書面となります。

その為、その内容如何によっては、【争族】を回避するどころか、かえって紛争を招く事態に陥る可能性すら考えられます。

最終的にどのような内容で作成するかは原則の通り【遺言者の自由】ですが、その検討段階において【遺留分】の存在をどう考慮するか重要な問題になると言えるでしょう。

今回の記事では、遺言書作成のポイントとなる【遺留分の考え方】についてご紹介していきたいと思います。


以前の記事の中でも取り上げましたが、この遺留分という権利は【一定の相続人に留保された財産の取り分】の事を言います。

関連URL:【遺留分とは?】

この遺留分については、遺言者が遺言書の中で【指定相続分】を定めたとしても、侵害する事は出来ず、遺留分権利者は【相続及び遺留分侵害の事実を知った日から1年以内】に【減殺請求】(取り戻すための手続き)をすればその権利の主張が可能となります。


つまり、遺言者側として財産承継における【相続人間の均等性】を保つ事よりも、例えば、【全額を特定の方へ残す】等の選択をした場合、上記の【遺留分減殺請求】を他の相続人から請求される事態が想定されるのです。

この点を実際に相続が発生した後に【相続人の側で取り組むべき問題】として捉えるのか、はたまた【遺言者側で遺言書作成段階から予防策を講じるべき問題】として捉えるのかで大きな違いがでるものと思われます。

行政書士として【遺言書作成の起案業務】にあたる際にも、この部分は必ずと言って良い程持ち上がるものです。原則上【遺言者の自由】でその遺言書内容が構成されると言っても、自身亡き後の相続人間の関係性を慮れば相応の工夫が求められるのかもしれません。

それだけ【遺留分】という存在は遺言書内容の実現に大きな影響を与える一要素となっている事は確かです。


では、実際にどのような【遺留分請求に対する予防策】が考えられるのでしょうか?

ご自身が健康なうちに遺言書を作成するという前提にて考えられる代表的な例としては・・・

①【遺言書を遺留分に配慮した内容で作成する

相続人の中に(または遺贈の相手方に)財産をできるだけ多く渡したい方がおられたとしても、遺留分請求をされてはその思いが果たせない場合もあります。そうであれば、遺言書作成の段階から【その遺留分に配慮した内容】で構成していく事も選択肢の一つと言えるのではないでしょうか?

最終的な判断は作成者自らが行うのが原則ですが、原文起案の段階では【ご自身亡き後の相続人間の関係性の想定】にまで思いを巡らす必要があると私は思います。

②【他の相続人に生前贈与の形で一定の資産を分け与え、遺留分の放棄をしておいてもらう

関連URL:【遺留分の放棄】http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_26/index.html

この方法においては、【家庭裁判所への申立て手続き】が必要になり、司法書士先生を介してのご提案となる事が多いです。(※行政書士は業際の関係上、家庭裁判所への申立て手続きは出来ません。

また、贈与の額やその型により、税金関係についての検討事項も発生しますので、その点ご苦労する部分も多いでしょう。

③【遺言書内で財産の全て、又は、そのほとんどを承継させる相続人を受取人とした生命保険契約をし、後の遺留分減殺請求に対する他の相続人からの代償金として活用する

生命保険金は受取人固有の財産となり、原則として民法上の相続財産には入りません。また、現金資産である分使い勝手も良く、この方法を採用されている方も多いのではないでしょうか。

④【そもそもの作成段階で自身の考えを他の相続人に理解してもらうべく誠意を尽くし話し合いを重ね合意書を作成する】(※最終的にその合意を守るか否かは他の相続人の方々に委ねられます。)

デリケートなテーマを含む遺言書とは言ってもその【作成の趣旨】までをも完全に秘密にしなければならないものではありません。『何故そのような財産分けとなるのか?』(例えば、体の弱い子供に多く財産を残したい・・・等)の『理由』や『考え・想い』を丁寧に他の相続人と話し合う事で、道が開ける可能性も考えられます。


今回取り上げた4つの方法以外にも選択肢はあろうかと思いますが、財産の全て、又は、そのほとんどを特定の1人に相続(遺贈)させるという遺言には、往々にして【遺留分】という【解決すべき大きな課題】が内包されています。

関連URL:【相続させる旨の遺言について】

相続が争族化しないための予防策】を事前に講じることは、ご自身亡き後の【相続人間の調和を保つ大切なプロセスとなる点、お見知り置き下されば・・と思います。

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