皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。
第23回目記事投稿となる今回のテーマは【任意後見契約の実用性】です。
前2回に渡りご紹介してきた【法定後見人制度】は多くの場合、対象者であるご本人の【判断能力の低下】が【既に起き始め】ている為、必要に迫られ申立てをする場合が多く、あらゆる面で準備不足のまま制度利用に入るケースが殆どであると考えられます。(【法定後見】類型の中で突出して【後見制度】利用が多いのはその証左なのではないでしょうか。)
この点を踏まえると【法定後見制度】はその一面として、起きてしまっている憂慮すべき事態に対し【事後的に対処していく】ものであるとも言えます。
関連URL:【法定後見人制度について①】 :【法定後見人制度について②】
しかし、高齢化著しい日本においては、誰しもが認知症等の【精神上の障害】に罹患する可能性があり、本来的には【判断能力低下後の生活設計】を【判断能力をしっかりと保っている時点において】組み上げておく事こそが重要であると思います。
【任意後見契約】はその様な【やって来るかもしれない将来を見越して事前に自らの意思で】信頼できる方を選び、その方に【判断能力が低下してしまった後の財産の管理と身上監護(保護)支援を担ってもらう】委任契約となります。
自身の価値観、積み重ねてきた人生観等を当該委任契約に最大限反映させ、【任意後見人】となる方への信頼を礎にご自分の思い描くライフプランを実現し得る事から(確実かつ適切な運用は必須ですが・・)、【成年後見】の理念を体現するものとしてより活発に利用されるべき価値のある制度であると言えるでしょう。
さらに、当該【任意後見契約】書面作成と同時期に、例えば介護に関する事柄や、終末期医療における意思表示としての【尊厳死宣言書】、家族に対する想いを込めた財産承継プランである【家族信託書面】、加え【遺言書】、お墓やお葬式の手配その他【死後事務委任契約書】等を組み合わせ作成しておくことで老年期以降の人生設計に安心感が加わるとも言えます。
また、この【任意後見契約】書面は、【法的書面の専門家】である【公証人】によって【公正証書】として作成され、その過程においては本人との面談・意思確認等も行われるので手続きとしても明確です。
そして、特に申述べておきたい【任意後見契約】書面作成の優れている要素は【法定後見制度】において度々見受けられる【ご本人の権利・資格制限】がないという点です。
かつて運用されて来た禁治産・準禁治産制度(制度の名からして無用な差別を生むとの批判もあったようです・・。)は、戸籍にその事柄が載ってしまったり、制度該当者本人の権利制限や資格の剥奪が著しいなど様々な問題を内包していました。その為、実際の制度利用者数は低調のまま推移して来た経緯があります。
そこで、平成12年に制度改正が行われ、新しい成年後見制度として【法定後見制度】が始まり、【自己決定の尊重】(自分の生活・療養監護は本人が自分の意思で決める)【残存能力の活用】(ご自身で出来る事はご自身で行う、残っている能力を尊重し十分に活用する)【ノーマライゼーション】(誰しもがごく普通の生活を営む事が出来る社会)等の理念の下、その運用がなされているのです。
しかし当該【法定後見制度】においても、制度利用者(成年被後見人)の選挙権剥奪の廃止等の具体的な権利擁護作用は見られるものの、現実問題として少なからぬ【権利制限と資格剥奪】の傾向が存在するのも事実です。
自らの価値観・人生の積み重ねにより得てきたものの上にある老年期の生活をおくりたいと願うのは誰しも同じです。【任意後見契約】は【法定後見制度】に優先し運用されることが原則ですし、任意後見監督人(任意後見の法的効力の発生はこの任意後見監督人の選任がなされることで開始されます。)が選任されれば資格制限等の懸念点に苛まれる事もありません。
これらのように【任意後見契約】を【判断能力がしっかりしている段階で】【自発的に】【信頼のおける人物と】結んでおく事には多くのメリットがあります。契約条項に載せる項目を専門家のアドバイスのもと吟味をし、ご家族の理解を得て確たる書面(法的に)として老年期の生活安定のために準備をしておく・・・この幾分手間のかかる作業もその価値に見合う努力とも言えるのではないでしょうか。
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