前回は【任意後見契約の実用性】についてお話しして参りましたが、第24回記事投稿となる今回は当該契約締結における【留意点】を記していきたいと思います。
関連URL:【任意後見契約の実用性】
【任意後見契約】はご本人の判断能力に減退が見られた後の【財産管理と身上監護(保護)】活動を任意後見受任者に行ってもらう為の委任契約です。
その類型に関しては制度利用上3つに分類されますのでお見知りおき下さい。
①【即効型】
軽度の認知症等を患っておられる方で判断能力に減退が見られても、契約時点において【意思能力】を有している状態であるならば、【法定後見制度】申立てを行う事無く当該【任意後見契約(即効型)】を締結する事が可能です。当該契約書面を公証役場において作成の後、迅速に【家庭裁判所】で【任意後見監督人の選任】を行ってもらい素早く契約の効力を発生させ、ご本人の権利擁護活動を開始する形をとる事になります。
ただし、この【即効型】については、ご本人の上記【意思能力】有無に(契約内容を理解しているか否か)疑義が存在すると効力発生もままならなず、逆に時間だけが過ぎてしまう結果を招きかねません。この点においては十分な検討が必要であると思われ、事前の【家庭裁判所】への相談は欠かせません。
②【将来型】
【契約時点において判断能力は十分】(つまり、この時点では任意後見受任者は後見事務の委託は受けず)であるが、将来の事を見越して【自身の判断能力が低下した時にはじめて】【任意後見人の保護】を受けるべく締結をしておく任意後見契約となります。
この【将来型】は任意後見契約に関する法律に則った【本来的な型】とも言えるものですが、この型において留意すべきポイントは、ご本人の【判断能力の低下時期】を任意後見受任者が【見誤る】、若しくはご本人との面談を頻繁に行わず【見過ごす】といった事態が起きた場合、円滑に【家庭裁判所】への【任意後見監督人の選任】申立てがなされず状況が悪化するといった点にあります。
たとえ【任意後見】契約の効力発生が将来であるとしても、その効力発生に備え常日頃よりご本人の状況把握に努める事は受任者となる者の基本姿勢と言えます。裏を返せば、ご本人側はこれらの予防的業務(契約発生前の見守り)を怠るおそれのある方を受任者に選ばないように気を付ける必要があります。
③【移行型】
【任意後見契約】は前述の通り【判断能力低下後】に効力を発生させる(家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらう事で)制度ですが、ご本人の考え方次第では『今現在、判断能力の低下は無いが、身体の具合が悪く、色々な手続きや管理(財産上の)が大変で誰かに支援してもらいたい・・・。』という状況の方もおられるでしょう。
このような場合に、【財産管理契約】や【見守り契約】を先ず締結しておき、常日頃のフォローを受任者に担ってもらいつつ、いざ【判断能力低下】が起きた場合には【任意後見制度利用】へと繋げていく・・・このようなシステムの契約が【移行型】と言われるものです。
現在、【任意後見契約】利用の現場で多く採用されているのがこの【移行型】と言われています。加齢に伴い少しずつ踏ん張りがきかなくなるお身体の状況にあって、【判断能力の低下】が見られなくとも周りでサポートしてもらえる環境を事前に整え日々の心配事に備える・・・そんなニーズが高まっている証明とも言えるでしょう。
【任意後見制度】3つの型いずれについても制度の枠内で効力を発生させ利用するには、【公正証書による任意後見契約の締結】➡【公証人の嘱託による法務局への任意後見登記手続き】➡【判断能力低下後の家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立て】と、これらの手順を必ず経なければいけません。
関連URL:家庭裁判所『任意後見監督人選任』http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_04/index.html
契約書面作成段階での任意後見受任者の代理権付与の範囲検討から、公証人との面談や意思確認作業、別途作成しリンクさせる書面(見守り契約・財産管理契約・尊厳死宣言書・家族信託・死後事務委任契約 等)作り、そして実際の制度運用・・・と、ご本人と受任者が共に歩み乗り越えて行くハードルは幾つも存在します。
また、その活動の中で受任者においてはご本人の権利擁護・身上監護(保護)の為第三者と議論を交わす等、一種【憎まれ役】のような立場に立たされる局面さえあると聞き及びます。綺麗事だけでは済まされない世界が実際の現場では繰り広げられているのでしょう。
しかし先にも申し上げました通り、【判断能力低下後】の【財産管理と身上監護(保護)】の問題は誰しもに起こり得る事柄であり、その解決の糸口として【任意後見契約】は大変有用であると思われます。
【法定後見制度】に比して【判断能力が低下する前に未然に計画建てをする】事に【任意後見制度】の最大のメリットがありますので、ご興味を持たれた方がおられましたら時期を逸する事無くご一考されてみてはいかがでしょうか。
関連URL:日本公証人連合会『任意後見契約』http://www.koshonin.gr.jp/business/b02
関連URL:【任意後見受任者の資質】 :【任意後見契約:代理権について】
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