【任意後見監督人の職務とは?】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部・所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第58回目となる今回のテーマは【任意後見監督人の職務とは?】です。


任意後見契約においての契約効力の発効時期は、【契約の締結の時】ではなく、【任意後見監督人が選任された時】となります。つまり、効力発生の為には当該任意後見監督人選任の申し立てを【管轄の家庭裁判所】にしなければならず、この申し立て時期を逸しない事が任意後見受任者には求められます

任意後見人は契約の中で定められた後見業務を適宜行うわけですが、その代理権の範囲内ならばあらゆる制限なしにいかなる行為でも実施してよい・・・というわけではありません

その行為の前提には第一義的に後見業務(任意後見人が選択する)が【ご本人のその人らしい価値観】に基づき実施されている事が必要ですし、常にご本人の身上に配慮すべく後見人側で『自身の後見業務が適正になされているか?』を自ら確認する姿勢もまた必要となります。


任意後見人自身の業務適正への気構え前提とするのが後見業務なのですが、更に業務の適正を担保するべく職務にあたる人物が【任意後見監督人】です。

では、この【任意後見監督人】の職務とは一体どのようなものなのでしょうか?

当該職務内容に触れる前にまず基本的な知識として【任意後見監督人の選任】について触れておきたいと思います。

任意後見契約においてご本人の後見業務そのものを担う任意後見人の選定】は委任者たる【ご本人の自由意思】によります

しかし、任意後見監督人については、任意後見人の業務が適正になされているかのチェック機能を果たす必要からご本人が選定するのではなく申し立てに基づいて【管轄の家庭裁判所】が選任する型を取っています。

つまり、ご本人の意向が多くの場面で反映される(後見業務を担ってもらう人物選び・代理権の内容等)であろう任意後見契約においても、こと任意後見人を監督する立場の人までは自身では決められないという点をひとまずご理解して頂ければと思います。


次に、選任された任意後見監督人の職務内容ですが、基本的には【任意後見人の職務が適正になされているかをチェックする事】が中心であり、当該チェック業務の参考資料として任意後見人作成の【金銭出納帳】や【後見事務報告書】【後見事務に係る実費等一覧表】の提出も求める事になります。

この一連の書面提出請求のタイミング監督人側の任意によりますので、任意後見人側としては、常にその請求を念頭に置き提出可能な状態で各種報告書面を準備しておく事が望まれます。

任意後見人には契約内容により財産の目録についてどのように記録や調整を行うかの基準が異なりますので、一律に目録調整の義務が発生すると表す事は出来ませんが、ご本人にとって大変重要な財産を管理するわけですから自ずとその業務に付随する書面をも管理しておく事は必須であると思われます。)

書面提出を受け精査した結果、不透明な用途でのご本人財産支出の疑いがあれば任意後見人に対し更に詳しいヒアリングを行い、その結果事実を管轄の家庭裁判所へ報告をする事もまたその業務に数えられるでしょう。

また、上記のような調査監督業務は任意後見人のご本人財産の管理分野に留まることなく身上監護分野にも及ぶ事は言うまでもありません。ご本人に対し【必要な支援や手配がなされているかのチェック】は財産管理の調査と共に監督業務の根幹を成すものとなります。


上記の基幹業務の他に、任意後見人側において【急迫の事情がある場合】には、任意後見人の代理権の範囲内において任意後見監督人自ら必要な処分をすることもありえます。例えば、任意後見人が何らかの病気にかかり後見事務が急遽行えなくなった場合に、一時的にご本人保護の事情に急迫性があれば例外的にその後見業務を担う・・・等の場面が挙げられます。

(ただし、このケースはあくまで例外的なものとして捉えるべきで、その代行の期間が長引く場合には復代理人の選任や事務代行者の指定が必要となりますのでお見知りおき下さい。)

また、任意後見人とご本人の利益が相反する行為利益相反行為)についてご本人を代表することも重要な職務となります。例えば、任意後見人とご本人が共に相続人である場合の遺産分割協議等の場面がこれに該当し、任意後見人の行為がご本人に不利益をおこす恐れがあるケースにおいては任意後見監督人がその防波堤となる役割を果たすこととなります。


任意後見監督人の職務は、ご本人の【財産管理】【身上監護】業務を担う任意後見人が適正にその業務を行う上で大変重要となるものですが、ご本人にとっては見ず知らずの第三者がその任につく事も考えられ任意後見人としてもどのようにその方と接するのか業務受任当初は悩まれるケースもあろうかと思います

しかし、決して反目し合う間柄として存在するのではなく互いに自身の業務を適正に処理していく事で【ご本人の生活安定に寄与する者】として尊重し合う姿勢が大切となるのではないかと思います。

 

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