皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部 行政書士 近田知成です。
記事投稿第59回目となる今回のテーマは【消費者被害と成年後見】についてです。
認知を発症されたご症高齢者が消費者被害に遭うケースは、人口の高齢化に乗じ今後より大きな社会問題として存在する事になろうかと思います。以前投稿した記事の中でも、被害に遭ってしまう前に『周りにいる方々が注意深くその方を見守る』態勢を整えておく事が重要であるとご説明致しました。
関連URL:【【かなさぽ研修記録④:消費者被害について】
この【消費者被害】の存在を踏まえ、成年後見制度の枠組みにおいては、(大きく分けて)①既に認知症の症状が現れ【判断能力が低下している】状況にある方の財産管理と身上監護としての【法定後見制度】と、②後に上記のような症状が現れた場合に【備え】、あらかじめ、自身が選択した方と【将来の】財産管理と身上監護におけるサポート体制を形作っておく【任意後見契約】の2種がある事もまた、以前の記事の中でご紹介させて頂いたと思います。
関連URL:【【法定後見人制度について①】 関連URL:【【任意後見契約の実用性】
では、上記2種の【成年後見制度】において、ご本人が遭遇した消費者被害からの回復アプローチに違いはあるのでしょうか?・・・。【消費者被害】という観点から成年後見制度を見た場合にこのテーマはとても重要であり、特に【任意後見契約】をご検討されている方におかれましてはこの疑問を解消されてから契約を結ばれる事が賢明であると思われます。
まず、大前提として【法定後見制度】における後見人は【ご本人の法律行為における取消し権】が存在しますので、判断能力が低下したご本人が消費者被害に遭ってしまった場合、後見人としては当該取消し権を相手方に行使する事により被害からの救済を試みる事になろうかと思います。
また、この取消し権については、【法定後見制度】内、保佐・補助類型においても、家庭裁判所へ申立てをする事で付与されるものとして消費者被害救済への手立てが残されておりますので、【法定後見制度】を利用されるご本人の権利擁護機能は、後見人等の【ご本に対する見守りを怠りさえしなければ】、一定レベル担保されていると言えるでしょう。
一方問題となるのが【任意後見契約】による消費者被害の救済です。
【任意後見契約】における後見活動の中で、任意後見人に(上記に記した)【法定後見制度】に認められるような独自の【取消し権(同意権)】は存在しません。任意後見人は契約の中で定められた代理権の範囲内で後見活動を行いますので、代理権目録の中でこの分野についての記載がなければ任意後見人としてはスムーズなサポートへ移行できずご本人の判断能力の低下状況如何によっては繰り返し巻き込まれる消費者被害に対応できない可能性すら考えられます。
また、たとえ代理権目録内で消費者被害を見越した条項を盛り込んだとしても【法定後見制度】における後見人等の【取消し権】程の汎用性は無く、出来得る事と言えば【クーリングオフ制度】を利用した権利救済等に限られてしまいます。(クーリングオフ制度は利用に関して【期限】等の制約もあり使い勝手に関しては【法定後見制度】における後見人独自の【取消し権】よりも悪いかとも思います。また、悪徳業者の中には、クーリングオフ制度活用を見越した対策を事前に用意しているところも存在し、実際上ご本人の権利救済はいばらの道であると言えるでしょう。)
もし、認知症症状の悪化により悪徳業者からの消費者被害に【繰り返し遭遇する】等の状況が見られるなら、例え自己決定の尊重を色濃く体現している【任意後見契約】を採用している方でも、任意後見人として【法定後見制度】利用へのシフトを考えなければならないかもしれません。
成年後見制度の本質は【ご本人のその人らしさ】の尊重と【権利擁護】にあります。
消費者被害が多く見受けられる現状においては、時として【自己決定の尊重】と【ご本人の権利保護】の均衡がアンバランスになってしまう状況もあります。
そんな時にご本人のサポート役となる方としては、常時の見守りを怠る事無く地域のコミュニティとも連携し、また、必要とあっては【消費者生活センター】への相談・連絡、専門士業を活用した紛争の解決も視野に入れた活動が求められることになるでしょう。
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