皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区で活動中の行政書士、近田知成です。
記事投稿第71回目となる今回のテーマは【成年後見とライフプランについて】です。
精神上の障がいにより、判断能力が低下した場合に、【財産管理と身上監護】を第三者に担ってもらう制度が【成年後見】制度です。
関連URL:【成年後見人制度について】
特に、転ばぬ先の杖として自らの判断能力が低下する【以前に】【契約】において備えを整えておく型を【任意後見】と言います。
関連URL:【任意後見契約の実用性】
この【任意後見】の契約書を公正証書で作成する際に同じタイミングで用意しておくと良い書面があります。
その書面は【ライフプラン】と呼ばれ、被後見人等となるご本人の【価値観や各種要望・客観的なデータや自身の情報】を記載しておくものとなります。
後見活動を後見人等に行ってもらう段階においては、その程度の差こそあれ、判断能力の低下がみられる為、ご自身の考えや思いを上手く相手方に伝えられない事態が頻繁に起きてきます。たとえ気心の知れたご家族(ご親族)を後見人に選んだ場合でも、その【本音ベース】の部分に関しては伝えきれていないかもしれません。
また、後見人側としても、ご本人が『どの様な事を望んでいるのか?』、後見活動を開始するタイミングに至って初めてリサーチしていたのでは遅きに失してしまう恐れも考えられます。
任意後見契約の場合には、その契約内容として細かな代理権目録を作成し、上記の【財産管理と身上監護】分野の基本的な要素は網羅されているのですが、実際に活動を行う上では後見人側において直面する1つ1つの問題に対する補完材料が必要になります。
これら被後見人側の【本音ベース情報の伝達】、後見人側の【活動上基礎資料の取得】双方において寄与する書面が【ライフプラン】と言えます。
その【ライフプラン】に書き込む項目ですが、以下のような部分に関して記述していくと良いかと思います。
①財産管理の情報や金融機関等との取引情報➡金融機関名・支店名・口座の種別・口座番号・日々の生活内における定期的な費用の支払い情報、不動産関連情報と管理の要望等。
基本的な取引機関に加え、株式、信託、貸金庫、トランクルーム等の基礎情報も記入しましょう。また、財産の管理についての要望(例:質素倹約で・・等)の記述も良いと思います。
②加入保険についての情報➡生命・医療保険、住宅にかけている火災・地震保険、年金・障害保険等の契約内容、また、契約更新の意思、各保険の担当者名等
③医療に関する事項➡かかりつけ医名(複数のかかりつけ医がある場合は、その全てを記します。)、主な持病やお持ちのアレルギーと今後の考え方(治療方法への希望)、服薬管理に関する情報、通院の足に関する事(介護タクシー移動について)、治療費の支払い事項等。
また、この③については、【終末期医療】に関する事項も含め記しておくと良いでしょう。(例:病名・余命告知について、胃瘻などの継続的栄養補給を望むか否か、人工呼吸器等による延命措置への考え方、緩和病棟・ホスピスへの入院に関する要望、検体を希望するか否か・・・等)
④施設利用に関する事項➡老人ホーム利用に関する要望(例:自宅から近い所を望む・・・等)、費用負担、家族への連絡・訪問に関する要望、入居の際に持たせて欲しいものリスト、施設利用に関して気になる点等。
⑤生活に関する事項➡日常の生活パターン(起床~就寝までのルーティン)、食の嗜好(飲酒・タバコに関する要望)
⑥ご自身の人生の歩み➡出生地、本籍地、趣味(好きなことやもの)、所属会社や部署(仲間についての情報)その他伝えておきたいこと。
⑦宗教(宗派)に関する情報➡ご自身が信仰されている宗教(宗派)に関する情報・連絡先等。
ここから先は、エンディングノート的要素も含みます・・・。
⑧葬儀埋葬に関する情報➡希望する葬儀の形式(例:お通夜・告別式・直葬)、連絡を入れる方の名前・連絡先、墓地の手配(あるか否か)、納骨して欲しい場所(方法)、散骨の希望(希望する事業者やプランなど)、葬儀埋葬費用についての要望等。
⑨相続に関する事項➡遺言書の有無(自筆証書か公正証書か、保管先、遺言執行者氏名・連絡先)、相続人となる方々への想い、残しておきたい言葉等。
⑩その他の事項➡後見人等に事務執行を行ってもらう上で伝えておきたい想い、自身の価値観等。
(この項目に関しては、ご自身の考えにより、追加や削除をして頂くと共に、その書面の中で『このライフプランを尊重し後見活動をして欲しい旨』及び『ライフプランはあくまで自身の要望であり後見活動を拘束するものでは無い』との事項も添えて作成しておくのが望ましいでしょう。)
上記のようなこと細かな情報を、公正証書による契約内容とは別に、後見人側へ前もって伝えることができる点は【任意後見】を選択された方の大きなプラスポイントと言えるでしょう。
その情報を事前に持っているか否か(あるいはその情報がご本人の【判断能力が低下する以前の本音ベースの情報であるか否か】ともいえるでしょうか。)は、後見人等にとって事務執行上大きな差が生まれると私自身は思っています。
【任意後見】の活用をお考えの方、また、ご興味のある方はこの【ライフプラン】をも含めた当該制度利用のメリットを知って頂けたら幸いです。
関連URL:【成年後見人制度について】 :【任意後見契約の実用性】
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