【成年後見人制度について】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第20回目記事投稿となる今回のテーマは【成年後見制度について】です。


皆さん、成年後見制度というものをご存知ですか?言葉だけは聞いたことがあるが、その内容については詳しく知らない・・・という方が殆どなのではないでしょうか。

日本社会の高齢化率は他国に比べても数値・速度共に極めて高く、その加速化に呼応するかのようにお年寄りの健康と生活を取り巻く諸問題も表面化するようになってきました。

時代の流れの中で、かつての日本社会で多く見られてきた【大家族でお年寄りを見守る生活スタイル】は減少し、核家族化の煽りを受け地域コミュニティの中でさえ孤立を深めてしまう方も多く見受けられるのが現状です。


たとえ近場にご子息等がお住まいであっても、その方々にも営んでいくべき自身の生活があり、年を重ねていく事で増していく【支援要望】をはっきり意思表示出来ないご高齢者も多くおられるでしょう。

支援を求める側も実施する側も、明確には行動に移さず不安だけが独り歩きする中、例えば【認知症】等を患い【判断能力の低下により】ご自身の思い描く生活スタイルを実践できなくなってしまったご高齢者はどのように生活設計を組み立てて行けば良いのでしょうか。


更に申し上げるなら、上記のような状況になる前【判断能力があるうちに、【後に判断能力が不十分になった場合に備えて自分の将来を自分で決める手立てはないものなのか?

一方、加齢に伴う症状のみならず不運な事故による後遺症や壮年期の脳梗塞(最近は働き盛りの年代に事に多く見られるそうです。)等により【高次脳機能障害】を発症してしまい日常生活を営む上で大変なご苦労を強いられている方もおられます。

そして、社会福祉制度の恩恵を真っ先に受けるべき【精神上の障害を負っている方】【知的障害をお持ちの方】も同様に生活のあらゆる場面において第三者の支援を必要としているのが実情でしょう。


これらの問題点を踏まえ、上記のような方々の【生活支援】については、①【介護・障害福祉サービス】を積極的に活用する(お住まいの地域の市役所障害福祉課相談支援事業所等に問い合わせた後申請と調査を経て、障害のある人が安心して自立した生活を送れるよう一人ひとり個別の利用計画に則した支給決定がなされます。)だけでなく、②介護施設や福祉サービスを利用する為の【契約】等の【法律行為支援や、ご自身では行う事の困難な【財産管理】についての必要な支援をも抱合して考えるべきです。


成年後見人制度】はこの②の分野、つまり【精神上の障害により判断能力が不十分な方々の権利を守り下支えする制度】です。

具体的には、判断能力低下によりご自身では困難となる【預貯金等の管理】を行ったり、【介護・障害福祉サービス利用や施設入所の為の契約を結ぶ支援】や、本人にとって必要となる契約を結びあるいは本人が結んだ不必要な契約等を取り消す・・・などが挙げられます。(悪徳商法に巻き込まれた場合本人の為に後見人が相手方に対し契約の取消権を行使することもあります。)

これら契約の締結であったり取り消しをしたり等の【法律行為】は自身の行った行為の内容とその結果について判断できるだけの能力が必要となりますが、その【判断能力】がなかったり不十分な方にとって上記の【成年後見人制度】を利用することは【安心して日常生活をおくるための一助】となり得るでしょう。

成年後見人制度】を知っていただくにあたって、今回は2つの留意点をご紹介しておきたいと思います。


①【成年後見制度には大きく分けて2つの形があるということ】

成年後見人制度】には①-1➡認知症などを発症して【既に判断能力が不十分になった方】(ここがポイント!)に対して、申し立てにより、家庭裁判所が成年後見人等を選任する形のもの(これを【法定後見制度】と言います。)と、①-2➡精神上の障害により判断能力が不十分になった時に備えて本人が判断能力が十分なうちに】(ここがポイント!)、自らの意思で自ら選んだ人に財産の管理等を委任する形のもの(これを【任意後見制度】と言います。)の2つが存在します。

※本来的には、自身の思いや価値観を最大限に反映させる為に【判断能力が十分なうちに】、先手で【任意後見契約】を信頼に足る受任者と締結する事が望ましいと言えるでしょう。

※【任意後見】ならば、運用を適切に行う事を前提として、【法定後見】では利用することが難しいとされる【将来のプラン介護・受ける医療の形・終末期に関する事・住まいの事柄・・等)】を自己意思決定のもと活用する事さえ可能となります。


②【成年後見人制度の利用には【家庭裁判所】が必ず関与するということ】

法定後見】は【本人の住所地の家庭裁判所】に後見等の審判開始の申立て】を行う事が必要ですし、【任意後見】は【任意後見人】となる受任者と委任契約を締結した後、【本人の住所地の家庭裁判所】に【任意後見監督人選任の申し立てを行う手続きを要します。(【任意後見監督人】は【任意後見人】が本人に対して必要な支援や手配を行っているか監視監督する者を言います。)

成年後見人等任意後見人含め)】は、本人の意思と価値観、生活スタイルを十分尊重すると共に、【財産管理】においては高い倫理観と【公人】としての職業意識を常に持ち続けることが必要であり、【身上監護(保護)】においては、本人にとって必要な支援と手続きを心身の具合や生活状況に応じて手配していく・・等単なる支援者では無く法的根拠に基づく重責を担う立場にある者です。


当たり前の事ですが、その活動を行う中で本人の財産を私的に使い込んだり権限を乱用して本人の不利益になるような振る舞いをすることは決してあってはなりません

(実際問題、これら【判断能力が低下している方の支援の現場では度々【その方の権利や行動を無暗に制限したり、財産を私的に消費・流用する】事象が起きていて、【家庭裁判所】における選任の審判少なからず影響が出ている模様です。)

その為、【家庭裁判所】にその選任や監督人の人選を担ってもらう事で、本人保護の観点に則した制度運用がなされる形となっているのです。


成年後見人制度】を知って戴く上の導入部分として、上記の2点とても重要なポイントと言えます。

一先ずこの点を前段として理解していただき、次回以降【法定後見制度】・【任意後見制度】と数回に分けて細かな部分を引き続きご紹介していきたいと思います。

関連URL:【法定後見人制度について①】 :【法定後見人制度について②】

【任意後見契約の実用性】   :【任意後見契約3つの型とその留意点】

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