【任意後見受任者の資質】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第38回目となる今回のテーマは【任意後見受任者の資質について】です。


以前の記事の中でも申し上げました通り、【任意後見制度】は本人の判断能力が低下する以前に【本人の意思により】【精神上の障害により判断能力が不十分になったときの自身の生活(身上監護と財産管理)の事務遂行を】【第三者に委任】しておく委任契約です。

判断能力があるうちに、契約の肝となる代理権内容を検討し、当該【委任契約】を締結しておく事が可能なので、【自己決定の要素が色濃く、その点【法定後見制度】利用に比べ成年後見制度の理念をより体現するものとして存在意義は大きいと言えるでしょう。


自己決定】という側面から更に掘り下げれば、後見事務を行ってもらう方に【自分の事を良く分かってくれている方】を選ぶことができるという点も見逃せません。


法定後見制度】利用における【後見人等】の選任については、申立時に【後見人候補者】を管轄の家庭裁判所に申述する事は出来るものの、最終的に決定するのは当該【家庭裁判所】であり【申立人】ではありません。

(申立てはご本人の息子さんや娘さんがなされるケースが多く、【自分を後見人として選んで欲しい】という強い思いをお持ちの方も多々おられるとは思いますが、現実はよりシビアであるという事は頭の片隅に置いておくべきでしょう。)

つまり、【家庭裁判所の判断いかんによっては、制度利用する本人にとって【本当に心から望む方ではない第三者が選任される可能性があるという事になります。


実際に、【法定後見制度】の利用状況からみても【家庭裁判所】が【親族以外の第三者】を【第三者後見人】として選任する傾向は強く、その背景には親族後見人の被後見人資産の使い込み等の事案から【成年後見人】として選任するには資質に欠けるとの判断が働いているものと思われます。

将来における【成年後見制度】利用を明確に意識し、その中で【この人に当該事務(身上監護・財産管理を頼みたい!】という個人(法人・複数人)が存在するなら【任意後見契約】の方を利用するというのも一つの選択肢になるでしょう。


では、その【任意後見受任者としてサポートを行ってもらう方】を選ぶ際、どのような点を重要視するべきなのでしょうか?

下記に幾つかのポイントを挙げておきますのでご参照ください。


先ず、大前提として【任意後見受任者】に特別の資格は必要ありません。ご本人が信頼する方を基本として親族・法律の専門家・福祉関係の従事者・ご友人・・等ご本人の選択に委ねられる事になります。

しかしながら、この【任意後見受任者】に一定の欠格事由があると、当該契約効力発生の為に行う家庭裁判所の【任意後見監督人の選任がなされない事になり、結果として任意後見制度利用が出来なくなる結果を招く事態になりますので、その点注意しなければなりません。

【任意後見受任者の欠格事由

未成年者                                           家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人                       破産者                                            行方の知れない者                                        本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族                 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者


次に大切な点は【成年後見制度の概要と手続きを理解されている方を選ぶという事です。

身近なご親族の方に判断能力の低下後の【身上監護と財産管理】を担ってもらいたいとお考えの方は多いでしょう。実際、古くからご本人との関係を良好に保たれている方ならば、その方(ご本人)の生活状況、価値観を的確に把握し、お身体の具合等の変化の兆しを鋭く見抜く事は可能であると思います。


しかし、そのご本人にとって身近なご親族の方が【成年後見制度】を【どれだけ理解しているか】はまた別の要素として捉えるべきでしょう。

何故ならば、たとえご本人の判断能力の低下にいち早く気付いたとしても、その後の【家庭裁判所】への【任意後見監督人選任申立て手続き】で手間取ってしまうとスムーズに当該制度を利用する事が困難となってしまうからです。

管轄【家庭裁判所】への問い合わせをしたとしてもある程度の【成年後見制度の知識を持っていなければ対応に苦慮する可能性もあります。

その為、【任意後見制度】利用において【任意後見受任者】となる方が【成年後見制度の概要と手続き内容】を把握しておく事は必須事項である言えるのではないでしょうか。少なくとも委任者側(ご本人側)において、自らの選択する受任者の方が【成年後見制度を学び理解する気構えがあるかどうか?】といった点も見定め契約を締結する必要はあるかと思います。


最後に、たとえ絶大な信頼をおく方であったとしても【余りに遠方にお住まいの方】の受任は現実的に難しいという点です。

任意後見人】はご本人の生活状況を把握し、必要な手配を行わなければならず、その中では電話連絡による生活状況把握だけでなく本人の自宅(老人福祉施設入居者の場合は当該施設、病院に入院されている方なら入院先)へ実際に訪問をし、上記生活状況や心身の現状を把握しなければなりません。

訪問頻度としては最低でも月に1~2回、ご本人の健康状態いかんによっては頻繁に訪問を繰り返しつつ更に福祉施設関係者や病院関係者の方々とも連携して事にあたらなければいけなくなります。

また、不測の事態においては深夜であっても様々な対応を迫られる事さえ考えられます。

これらの可能性を踏まえ、任意後見受任者はご本人の生活範囲圏から遠からぬ位置にその生活の本拠がある事が望ましいと言えます。委任者側としては、『痒い所に手が届く』後見活動を見据え慎重に受任者を検討なさってください。


上記3つの要素はごく基本的な考え方とも言え、個別具体的にはプラスαの要素も加わります。(ex:お金にルーズであるか否か・根気よく物事に取り組む姿勢があるかどうか・書類整理や記録作業に向いているか否か・年齢は幾つか・人の話を最後まで聞いてくれるか・フットワーク良く動けるかどうか・・・・等)

任意後見ご利用をお考えの方は、漠然とした相手方(任意後見受任候補者)への信頼だけに偏ることなくあらゆる方面から任意後見受任者として適任であるかどうか】を見定めるようにしましょう。

関連URL:【成年後見人制度について】【成年後見業務の適正について】

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