【成年後見制度にまつわる疑問①】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第45回目となる今回のテーマは【成年後見制度にまつわる疑問①】です。


我が国が現在直面している超高齢社会において、高齢者や障がい者の権利擁護は一大テーマとなりますが、制度開始18年を超え運用されている【成年後見制度への理解はその必要性の高さに比して未だ低いと言わざるを得ません。(【成年後見制度】という名前だけは聞いたことがあるが、その制度内容までは知らないという方が多いのではないでしょうか。)

今記事を含め以後数回に渡り、当該【成年後見制度】の素朴な疑問を幾つかご紹介したいと思っています。どれも基本的なことばかりですが、制度理解への足掛かりに必要な部分となりますのでぜひご参照下さい。

関連URL:【成年後見人制度について】【コスモス成年後見サポートセンター入会】


【①そもそもなぜ成年後見制度』は必要なのか?

以前の日本社会においては、家族の繋がりの強さ・地域コミュニティの深さなどで高齢者や障がい者の方々を(特に身上監護の面において)【みんなで見守ってきたお互いの助け合い)】社会形態が存在しました。

家族や地域に住む方同士での相互扶助による支援環境は一昔前にあっては当たり前のことだったのかもしれません。


しかしながら、近年の社会生活においては核家族化や地域コミュニティの希薄さお隣同士でも全く付き合いが無いなど)の傾向も顕著となり、精神上の障がいなどで判断能力が低下している方の権利擁護が必要とは言っても、『家族は独立して遠方に住んでいる』『親戚とは疎遠状態が続いている』『近隣住民や地域コミュニティにおいても知らない者同士』・・・等の事情から、容易には適切な支援をし得ない現状があります。


ただ、この支援の存在はその方にとっては正に生命線であり、そのまま現状に目をつぶっていて良い訳がありません。何しろ判断能力の低下が起きている状態では、日々の生活における各行動(例:預金の引出しや管理、必要な福祉サービス契約の締結、病院費や必要品購入の支払い、、送られてくる重要書類の整理・・・等)に危うさが伴うのですから・・・。

また、これらの現状を放置してしまうと、延いては(精神上の障がいにより判断能力の低下した)高齢者や障がい者の方々が【消費者被害(例:悪質な訪問販売、不必要なリフォーム工事等)】にあってしまう恐れさえ考えられます

(実際に、これら判断能力低下の隙をついて、その方の自宅に複数の悪質な業者入れ代わり立ち代わり高額商品を売り付ける為に出入りし契約を結ばせ、久しぶりに実家に帰省した子供が【親が大変な事態に巻き込まれていた】事を後になって知る・・・といった話を聞き及ぶ事が多くなりました。)

関連URL:【消費者被害と成年後見】


上記の『生活上の危うさ』を後見人等未然に防ぐあるいは軽減すると共に、【財産管理と身上監護】において必要な支援を行う為に必要となる制度が【成年後見制度】です。今後、更に当該制度利用の必要性は増すでしょうし、高齢者や障がい者の方の生活における現在進行形の諸問題を鑑みればより多くの方に制度利用の重要性を知っていただきたいです。


②【同居の家族がいれば『成年後見制度』は必要ない?

成年後見制度】の目的は、精神上の障がいにより判断能力が低下した方の【財産管理と身上監護】にあります。

独居で生活を営み上記のような症状に至った方はもちろんのこと、ご家族と同居されている方であっても本来ならば当該制度を活用し、【法的にご本人に代わって法律行為を成し得る方を定めておく事が必要です。

昨今、幾つかのご家庭では同居のご家族等が(判断能力が低下した)本人の財産を管理し、必要に応じ預貯金等の引出しをした上でご本人に関する各種の支払いを行う方法で対処しているものと思われますが、この方法はあくまで【慣習上のものとして行われている側面があります。ご本人の預貯金等資産の『使われ方』や『管理の仕方いかんによっては『利益相反行為』を疑われ、無用なトラブルが発生する可能性も憂慮される支援の型とも言えます。

また、認知症を患っている方などが介護福祉サービスを受けようとする場合のサービス提供事業者との契約の場面や、金融機関における預金の引出し等で相手方から後見人を立てるよう要請される事も考えられます。

つまり、これらの場面においては【家族が同居をしているか否かが問題となっているのでは無く、契約締結能力に疑義のない【法的に権限のある方の存在が必要であるという事を表していると言えます。その点に関して多くの場合【(同居の)家族である事だけでは足らない部分があるというのが現実です。

成年後見制度】の枠組みを利用するという事は、【家庭裁判所】の直接的または間接的な関与の下でご本人の支援を行う事を意味しますので、相手方との契約や各種手続きにおいては、自身が後見人等として【法的に認められたもの】であるという明確な立場を示すことが可能となります。

ご本人の生活上の安定性を担保する為にも【契約や事務手続きその他支援の場面で】遅滞が起こる事が無いよう【後見人等】としての【法的な確固たる立場】を示すべく体制を整えておく事が大切となります


次回以降も【成年後見制度にまつわる疑問】をお送りしていきたいと思います。

関連URL:【成年後見制度にまつわる疑問②】【成年後見制度にまつわる疑問③】

【成年後見制度にまつわる疑問④】【成年後見制度にまつわる疑問⑤】

【成年後見制度にまつわる疑問⑥】【成年後見制度にまつわる疑問⑦】

【成年後見制度にまつわる疑問⑧】

 

 

 

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