第49回目記事投稿となる今回も【成年後見制度にまつわる疑問】について引き続き記述していきます。
関連URL:【コスモス成年後見サポートセンター入会】
⑦【親の後見人に自分(子供)がなれるのか?】
人間が年を重ねる事で表面化してくる生活上の支障は各家庭単体でその全てを解決するには事が大き過ぎ、高齢化が顕著である日本にあっては最早【社会全体(地域全体)の中で手を取り合って解決していくべき問題】であると言えます。
しかしながら、父母が高齢となった場合の支援において【子供】の果たす役割が大きい事は言うまでもないですし、実際『親の後見人には(親の事を一番わかっている)自分(子供)がなりたい。』とお考えの方も多いのではないでしょうか?
親の後見人を選任する為の申し立ての際に記入する事が可能である【後見人等候補者】の欄にも自分(子供)の名前を記して提出する方もおられるかと思います。
では、【成年後見制度】その中でも特に【法定後見制度】における【家族(親族)後見人の選任確率】は一体どれくらいなのでしょう・・・。
この答えは実にシビアで、【後見人等選任の申し立て】を経ていわゆる【親族後見人】が就任する割合は申し立て全体の【3割程度】に留まっているのが現実です。(つまり、逆に言えば6~7割は【専門職後見人】が選任されているという事を表しています。)
この家庭裁判所の審判決定の背景には、後見現場における親族等の【ご本人資産の使い込みへの懸念】があると思われます。親(被後見人等)の資産と子(後見人等)の資産が明確化せず『利益相反行為』のリスクは密接な関係にある親子間の方が起こりやすいと家裁は考えているのかもしれませんし、後に顕在化するかもしれない親族間紛争を踏まえ、専門職を後見人に選任する傾向があるとも考えられ、いずれにしても【親族後見人】が選任されるケースは現実的に少ないと言わざるを得ません。
関連URL:【成年後見業務の適正について】
(*参考資料として平成29年1月~12月『成年後見関係事件の概況:最高裁判所事務総局家庭局』発表のPDFが家庭裁判所HPにて公表されていますので、気になる方はチェックしてみてください。)
しかし、親は『子に自分の支援を行ってほしい。』と考えるものですし、一方子供は『自分が支援してあげたい。』と願うものです。(親子間で諍いがあり、互いに疎遠状態となっている場合も考えられますのでケースは様々ですが。)
【法定後見制度】運用上の現実と親子間の心情の両ベクトルの差を上手く埋める手立てはないのか・・・。
取り得る方策の一つとして、【任意後見契約】を活用し【委任者(親側)・受任者(子供側)】の支援体制を整えておく事が挙げられると思います。
【任意後見契約】ならば【法定後見制度】とは違い、後見人として活動してもらう方をご本人自身が自らの意思で決定する事が出来ますので、子供に自分の後見人になってもらいたいとお考えの方にとって検討に値する制度利用の型と言えるでしょう。
ただし、この【任意後見契約】運用に際しても注意するべき数々のポイントは存在しますのでその点専門家の意見をもとに準備を進める事をお勧めします。
関連URL:【任意後見受任者の資質】
⑧【後見人等選任の申立てから決定までどれくらいの期間がかかるのか?】
【法定後見】は家庭裁判所の審判により【後見人等を選任】してもらう事によって初めて利用できる制度です。この制度を利用するケースにおいては既にご本人の判断能力の低下が多少みられる事も考えられ、手続き的にスピーディーな対応が求められます。
【申し立て】時の段階でスムーズに必要となる書面(診断書や親族関係図等)を入手・作成し、審判段階における家庭裁判所の調査にも適宜対応、鑑定となった場合の医師の未然確保から不足のない関係費用の納付と・・・あらゆる段階の障壁を問題なく越えたとしても、【申し立て】から【審判の確定】までには通常2~3か月はかかります。
その間のご本人の生活状況・認知機能等の現況等は大変気掛かりな部分ではありますが、申立人側で正式な後見人等が選任されるまでの間適宜サポートされる事も必要になろうかと思います。
また、上記にも記しましたが、審判の決定を遅らせない為の1つとして、【鑑定となった際に当該職を担当してもらえる医師の目途を付けておく】事が挙げられます。
【申し立て】の際に必要となる【医師の診断書】を入手する時点で、『鑑定となった場合に当該鑑定医の任を引き受けてもらえるか?』の確認をし、了承を得たなら【診断書の附票】にその旨を記入して頂き診断書とともに家庭裁判所に提出する方法がより良いと言えるでしょう。
(*上記【申し立て】についての説明は一般的なものとなります。行政書士はその職として、家庭裁判所への申立て手続きを代行することはできませんのでご承知おき下さい。)
次回も同じテーマで記事投稿していきたいと思います。
関連URL:【成年後見制度にまつわる疑問①】 :【成年後見制度にまつわる疑問②】
:【成年後見制度にまつわる疑問③】 :【成年後見制度にまつわる疑問⑤】
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