【成年後見制度にまつわる疑問⑤】

引き続き【成年後見制度にまつわる疑問】をお送りしていきます。

関連URL:【成年後見人制度について】 :【コスモス成年後見サポートセンター入会】


⑨【成年後見制度の利用対象者とは?

この知識も制度利用上基本的な部分となりますが、とても大切な点につきご紹介いたします。

成年後見制度】の利用対象者は、【精神上の障がいにより(この『精神上』という部分がポイント)『事理を弁識する能力を欠く』(あるいは『事理を弁識する能力が著しく不十分』『事理を弁識する能力が不十分』な方)状況にある方となります。

精神上の障がい】による判断能力の低下が制度利用の要件ですので、【身体機能上の障がいのみ】での利用は対象外となりますので、注意が必要です。また、単なる【浪費者】等も制度利用の対象にはなりません

具体的に制度利用の対象となる方は①【認知症を発症された方】、②【精神障がい者】、③【知的障がい者】④【事故や病気により高次脳機能障がいを発症された方になります。

①【認知症を発症された方】については、高齢者のみならず、昨今その発症が大きくクローズアップされることの多い【若年性認知症】の方や、三大認知症といわれる【アルツハイマー型認知症】・【脳血管性認知症】・【レビー小体型認知症により『判断能力の低下』がみられる方が対象となります。

②【精神障がい者】については、【統合失調症】・気分障がいと呼ばれる【躁うつ病・うつ病】など二大疾病が制度対象者として挙げられますし、その他【解離性同一性障がい】により判断能力が低下した方もその対象となります。

精神障がい者】による成年後見制度利用においては、その病状を的確に把握し、かつ制度利用上の識見に明るい医師の存在が大切となりますので、申し立て前の医師選びにも細心の注意を払うようにしましょう。(後の【鑑定】を見越した医師選びが大切。)

また、いわゆる神経症(例:ノイローゼ)や不安神経症パニック障がい強迫性障がい等は一般的に【精神上の障がい】には該当しない事が多いので、制度利用の対象とならない事も考えられ、医師や家庭裁判所との事前相談によっては制度利用不可の決断をしなければならない事も含みおき下さい。

③【知的障がい者】については、各地方自治体により【知的障がい者】としての判定を受けている場合、【療育手帳】が発行されます。若年の段階で当該状態にある方については、『親なき後』の後見制度の活用が検討事項として挙げられるのではないでしょうか。

④【高次脳機能障害】については、脳卒中等の疾病や交通事故などで脳細胞に損傷を負い記憶や思考、学習面において障がいがあらわれるもので、社会生活上大切な要素である注意力や判断力の低下がみられる事もあります。また、感情的に不安定になり行動に危うさが伴なうケースも考えられます。

上記①~④の方々が制度利用(支援保護)の対象となります。後見人等は、これらの方々の残された能力の活用を念頭に置き、『その人らしさ』を前提とする安心した日常生活を送ってもらうべく【財産管理と身上監護】両面でサポートしていく事になります。


⑩【成年後見人の職務を監督するシステムはあるのか?

成年後見人】はその活動においてご本人(成年被後見人等)の【財産】を【管理】する事になります。

成年後見人】が行う【(ご本人の財産管理】が不適切なものとならないよう後見人としての高い倫理観が要求される事は言うまでもありませんし、各支出に際しても常に『後見活動としての支出となるのか』『支出の適法性・妥当性が担保されているか』等を自らチェックしながら実行していく事が大切となります。

関連URL:【成年後見業務の適正について】

成年後見人】が行う【財産管理や身上監護】事務が適切に行われているか監督するためのシステムとして【家庭裁判所】は成年後見人等に対していつでも事務報告】や【財産目録の提出】を求めることができる体制を整えており、後見事務や被後見人等の財産状況の調査をすることが出来ます。

また、【家庭裁判所】は事案の必要性に応じ【成年後見監督人】を選任することができ、【成年後見監督人】は上記のように後見人の事務全般について監督を行ったり、自ら調査を行う事も可能となっています。

(*財産関係が多額で複雑な状況の場合には親族間での紛争が想定される場合もあり、そのようなケースでは【成年後見監督人】の選任が行われる事も考えられるでしょう。)

その他、被後見人等の居住用不動産の売却・賃貸その他の処分をする為には【家庭裁判所の許可】が必要ですし、後見人と被後見人等の利益相反行為に際しては、【特別代理人の選任】が必要等の規定も設けています。

後見業務】に伴う【ご本人財産の支出】には、【家庭裁判所】の直接的・間接的監督が及びますので、後見人等としてその支出が適正か否か判然としない場合には常に家庭裁判所】に相談をし、事前のチェックをしてもらう事も重要です。

ご本人支援のための制度運用が【支援する側の不適切な行為により滞ってしまっては本末転倒です。後見人等にあっては、後見監督人の選任による事務監督機能の有無にかかわらず、その活動をする上で『人一人の生活の根幹部分を自分に委ねてもらっている』という気構えが必要になると私は思います。


次回も引き続き同テーマ【成年後見制度にまつわる疑問】をお送りしていきたいと思います。

関連URL:【成年後見制度にまつわる疑問①】 :【成年後見制度にまつわる疑問②】

【成年後見制度にまつわる疑問③】 :【成年後見制度にまつわる疑問④】

【成年後見制度にまつわる疑問⑥】 :【成年後見制度にまつわる疑問⑦】

【成年後見制度にまつわる疑問⑧】

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