第51回目記事投稿の今回も前数回と同じく【成年後見にまつわる疑問】をテーマにお送りしていきます。
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⑪【後見人が出来る事or出来ない事とは?】
支援対象者ご本人の【後見人】となった場合、その後見人が行う事務の中心は【財産管理と身上監護】活動になります。ただし、この【財産管理と身上監護】というフレーズを聞くだけでは実際にどんなことを行うのかのイメージがしづらいのも事実でしょうから今回は少し具体例を挙げていきたいと思います。
【財産管理】
ご本人『財産の保存・現状を維持する』、『財産の性質を変更しない範囲における利用・改良』、『財産の処分』等の行為をあらわします。
日用品の購入であったり、日常生活に関する行為については、被後見人ご自身が単独で行うことができます。(この点は、旧制度と異なる部分です。)当該日用品の購入等に関しては後見人の取り消し権は及びません。
具体的には・・・預貯金や年金収入、不動産の管理(現金資産について金銭出納帳での管理・使用頻度の低い預貯金については定期預金での管理・年金関係については通知書管理と現況届手続き等・不動産の管理はご本人が賃貸物件の借主ならば賃料の支払い・賃貸不動産をお持ちならば賃料の回収(ご本人収入としての受け取り)・自己所有不動産等の老朽化で近隣の住民から要請があった場合の対応・・・etc.)が挙げられます。
【財産管理】の大切な部分はご本人財産と後見人の財産を明確に区別して混同が起きないようにするという点にあります。また、金融関係(銀行・年金事務所等)役所からも含め『ご本人資産に関する通知書』を整理・保管し、【家庭裁判所】への報告や後見監督人からの事務経過報告に適切に対応することもその事務の1つに数えられます。
【身上監護】
ご本人の【療養監護】面に関する契約事務等がその活動の中心になるでしょう。
例えば、被後見人の方が認知症を発症されたご高齢者の場合、介護サービス利用に関する契約の締結(ケアマネージャー提示のケアプランの検討からサービス事業者の選定・介護サービス契約の締結代行等)や病院における医療契約締結や必要な費用の支払い、また、施設等に入居されている方が適切なサービスを受けているか本人状況を確認し、必要に応じて施設側へ申入れを行う等もその活動内容に含まれます。
これらの活動を行う上での前提として、ご本人の病状や日常生活動作を把握することは後見人の必要不可欠な使命の1つと言えます。
その為、【身上監護面】においては、各専門分野の方々(ケアマネジャー・介護福祉士・病院、施設内担当者の方々など)にアドバイスして頂く機会も必要となりますので、これらの方々との関係を適切に築き円滑なコミュニケーションを図る事も大切です。
一方で【成年後見人】がその活動の中で行わない(後見業務の範囲に入らない)部類の事柄も存在します。
その代表的な例が、【事実行為】と呼ばれるもので、例えば【食事の介添え・入浴補助・排泄等のお手伝い(認知症の方などのオムツの交換)・買い物や外出、通院等の送り迎え・・etc.】が該当します。
後見人としては上記のようなご本人に対する【介護行為など】を自ら直接行うのではなく、適切なサービスが受けられるように介護福祉士の方や医療機関に委託するべく【必要な手配】を行ないます。通院に関する移動の問題は【介護タクシー】の利用等も選択肢になるでしょう。
後見人がこれらの行為を行ってはならないというものでは決してありませんが、【介護行為】のような専門性を要求される事柄においては、その分野のスペシャリスト(介護福祉士など)にその職を担ってもらう事が通常であるとご理解下さい。(つまり、それぞれの立場の人がそれぞれの『職域の中』でご本人を『チーム』として見守る事を表しています。)
また、後見人としてその職務を行う中で直面する難しい問題として、『ご本人に対する医療行為の同意』は原則的に出来ないという点が挙げられます。(治療や手術を行う際の同意権は後見人にはない事を意味します。)
被後見人の方が医療(手術や治療)を受ける事に同意する権利は『一身専属権』であり、他の方が代理で出来るものではないという考え方があり、それは後見人であっても同じと言えます。
後見人としては第一義的に『ご本人の意思を汲み取る』作業を怠ることなく、万が一の事態に備え『ご家族(ご親族)』)等に同意を求められた場合の対応をしてもらえるよう話を通しておく事が必要となります。(医療現場の通例として、ご家族の同意が一般的になされているのは周知の事実です。)
また、これら『ご家族(ご親族)』がいない場合には、担当医師に『後見人としての医療同意権はない』事を伝え、理解を求めると共に、これから行う医療行為の重要性に鑑みて担当医師自身による判断を促すことになるでしょう。
これら後見業務と【事実行為】【医療同意の問題】については、多くの場合【第三者後見人】が直面するケースであって、【親族後見人】であるならば【親族】という立場で切り抜けられる事も考えられます。
ただし、どのような立場の後見人であっても共通して言えるのは、後見人として手を差し伸べる事の出来ない事態に備えて、日々の後見活動の中で『他の支援者の方とチームでご本人を支える』・・その環境を整えておく事が大切であるという点に尽きるのではないでしょうか。
次回、第52回記事も同じテーマでお送りしていく予定です。
関連URL:【成年後見制度にまつわる疑問①】 :【成年後見制度にまつわる疑問②】
:【成年後見制度にまつわる疑問③】 :【成年後見制度にまつわる疑問④】
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