皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区にて活動中の行政書士、近田知成です。
今回は先月末、神奈川県海老名市【文化会館】で開催された【成年後見利用促進・地域連携ネットワークフォーラム2019/~本人の意思決定支援を踏まえた地域連携ネットワークの構築に向けて~】について(私見を含め)記述していきたいと思います。
当該講演会は成年後見にまつわる各分野で活躍されている方を講師として招き、現場で活動する後見人等が日々の事務と自己知識をブラッシュアップする為に神奈川県社会福祉協議会が毎年開催しているものです。
私が所属している成年後見支援団体【コスモス成年後見サポートセンター神奈川支部】内会報においても、このフォーラム参加への要請があり、自身としても今後の当該分野活動に資すると考えた為、当日参加する事に致しました。
講演内容の1つに家庭裁判所が行う【後見人選任判断の傾向】を取り上げたお話があり、大変興味深く拝聴させて頂きました。
成年後見制度開始当初、法定後見人として活動する方は、ご利用者の【ご家族(特に子供)】が殆どであり、その数は制度利用全体の約8割以上であったそうです。
(かつての後見活動の中心担い手は【親族後見人】であり平成12年~20年度辺りまではその状態が続いていました。)
家庭裁判所の審査官としてもご本人にとって【身近な】ご家族こそ後見人として相応しいといった考えが存在していたのかもしれません。
しかしながら、後見制度運用が継続されていく過程で後見人である【ご家族】による【ご本人資産の使い込み】や【不明瞭な使用目的によるご本人資産の支出】等の問題が垣間見え、いつしか(平成24年度頃から)専門職の方々がその任に就く傾向となっていきました。
【親族後見人】はご本人の歩んでこられた人生に基づく【価値観】を察知する点に長けている反面、【財産管理】という後見事務においては切っても切れない重要点に関して些か【ルーズ】になってしまう事もあったのだと思います。
その点、専門職と呼ばれる士業団体はそれぞれ後見事務を行う上での様々な研修を事前に受け、【身上監護面】のみならず、【財産管理面】においてもチェック項目を設け、適正な事務執行を心掛けています。
後見人となる人間自身が制度を正しく理解している部分は、家庭裁判所側の選任判断に少なからぬ作用を及ぼし、次第に専門職が多く選任される状況へと繋がっていったのでしょう。
また、【親族後見人】不選任の流れは、(ご本人の)子供【以外の親族(例えば、兄弟・甥姪等)】が殆ど後見人として活動する事が無い事実を見ても明らかであり、その背景には【親族同士であっても様々なトラブルや疎遠な関係が当事者間に横たわっている】のだと思われます。
上記のような一連の流れを見れば、今後は更に専門職を含めた【第三者後見人】こそ真っ先にその制度の担い手となるように感じられます。
しかし、今回のフォーラムの中では今年に入って打ち出された最高裁の方針転換に触れ、親族等【ご本人に‟身近な人”】を選任する傾向が強まるだろうとの見解がなされていました。
一見すると(言葉尻だけを捉えると)、『また以前の様に親族後見人が多く選任されるのだな・・・』とお考えになる方も多いかと思います。
ただ、このことはむしろ専門職を含めた【第三者後見人】への最高裁からのメッセージではないだろうか?というお話でした。
つまり、現状として70歳代後半~80歳代以降にかけた所謂【後期高齢者】の方々が成年後見制度利用の中心層となる中で、ご本人の【親御さんや配偶者】の方が後見人活動を行うのは困難(当該フォーラムではこの事を‟老老後見”と言い表していました)と言えます。
加えて、昨今の少子化やご兄弟や親族との関係性の希薄化もあり、【親族後見人】が以前の様に後見現場で大多数となるわけでは無く、今後も【第三者後見人】の必要性は高まるものと思われます。(地域の中で市民後見人養成講座等が実施されているのはその証左とも言えます。)
では、何故最高裁はこのような判断を行ったのか・・・?
ポイントとなるのは上記の【ご本人にとって‟身近な”】という点にあり、成年後見人となる【第三者】は、純粋な【第三者】よりも【ご本人の価値観や意思】を汲み取る努力を惜しまない方が望ましいと示したかったのではないでしょうか。
言い換えれば【事務手続きのみ淡々と行うのでは不十分で、ご本人への‟寄り添い”活動を今後は重視する】とも捉えられます。
このことは【成年後見支援団体】に所属している私としても非常に重要なピースであると感じています。
後見人は【ご本人の財産管理事務だけ行って面会交流を殆どしない・・・。】等と言われる事の無いよう、今一度制度の根幹部分より心に刻んでいかねばな・・・と、実感した事が今回のフォーラム参加最大の収穫であったと思っております。
関連URL:【成年後見業務の適正について】 【任意後見受任者の資質】
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