【財産管理委任契約について】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

第25回記事投稿となる今回のテーマは【財産管理委任契約】についてです。


前回記事投稿【任意後見3つの型とその留意点】の中でも少し触れましたが、【任意後見契約】は【精神上の障がい】により【判断能力が低下】した場合に備え、事前に任意後見受任者と【財産管理と身上監護(保護)活動】を行ってもらう為に締結しておく委任契約となります。

関連URL:【任意後見契約3つの型とその留意点】

この制度の枠組みにおいては【身体上の障がい】は適用の要件に入っておらず、あくまで【精神上の障がい】の存在が対象となっているのです。


しかし、老齢期の生活の中で【判断能力の低下】は見られずとも【身体上の不調・疾病・障がい】等で日常の法律行為や事務手続きを行う事が困難な方は多くおられます。

足腰の状態が悪く銀行での生活費の引落し等で当地まで行くのが大変であるとか、介護保険サービスを受けたいが申請等の問い合わせや書類の取得をするにしても目や耳の具合が悪く困難を伴う、また公共料金や家賃の支払いについても身体が不自由になってきてスムーズに行えない等、これらは年配の方々によく見受けられる事象です。

上記のような例では、近くにお子様が住まわれていてご本人の代わりにその都度手続きを代行してくれているケースも多々存在するでしょうし、実際その形で事足りている方もおられるでしょう。金融機関の本人確認についても委任状作成で乗り切る事も可能かと思います。


しかし、考えておくべきは【大病を患い長期間の入院治療を要する】であるとか、【介護福祉施設への入居】等事態が更に一歩先に進んでしまった場合の備えをどうするかという点なのです。

このような場合、【長期にわたってご本人の財産管理(各種支払い等)や看護の為の事務手続き】が続くので、単発的な委任状作成で『本人から頼まれて手続代行しています。』と証明していくには手間がかかり過ぎ現実的ではありません。

また、支払いに要する金額も多額となり、通常の慣行の延長線上で代行するには少々リスクも伴います。(手続代行をしているお子様(ご親族)がその他のご兄弟から親のお金を使い込んでいるのでは・・・?疑念を抱かれ支援活動に支障をきたす等も考えられなくはありません。)


財産管理等委任契約書】はこれら【身体上の障がい】で【長期にわたり自身の財産管理や療養監護事務手続きを自ら行えないような場合にあらかじめ信頼できる方に当該活動を代行】してもらうべく作成しておく書面となります。

当該書面によりご本人との関係において対外的に【正式な受任者(当該手続き上の)】として活動する事が可能になりますし、金融機関や役所、介護施設や病院においてもご自身の立場を客観的に証明することができます。


また、この書面は公証役場において【公証人】が関与する【公正証書】として作成できますので、書面そのものの【公的証明力】も高くその効力に疑義が差し挟まれる事もないでしょう。(後のトラブル防止の為には【私的な書面】に留める事無く、【公正証書】で作成する事をお勧めします。)


この様な書面を作ってしまうと『自分の資産を良い様に使われてしまうのでは?』とお思いの方もおられるかもしれませんが、【公正証書】で当該【財産管理等委任契約書】を作成する際には【代理権目録】の中で代理人の権限範囲を【財産の管理と保存に限定し、【財産の処分】をできないように制限する事で対応する事が可能となります。


先ずは受任者となる方と入念にお話し合いをした上で当事者双方の意思を確認し、その後【公証役場】に問い合わせ備え付けられている【ひな型】を入手し、【代理権目録条項の検討】、【公証人】と連絡を取り実際に作成する日を調整して当日を迎える・・・この様な手順で進めていく事になります。

ちなみに、【公証役場】で当該書面を作成する当日委任者(ご本人)と受任者双方が現地に赴く必要がありますのでスケジュール確認についても注意を要しますし、その段階におけるご本人の体調への配慮も(受任者となる方は)考慮に入れて進めていく事が重要です。


一見仰々しく感じられる(家族間(親族間)での書面の取り交わしとなる事もあるので・・・)当該【財産管理等委任契約】ですが、【長期に渡る継続的な支援の現場】では殊の外受任者となる方の活動の円滑化に寄与する助けとなるのではないでしょうか。

また、前2回に渡りご説明した【任意後見契約書とともに作成しておくと、お身体が【心身両面で不自由】となってしまった場合の備えとして大変有用であると思われます。

関連URL:【任意後見契約の実用性】【任意後見契約3つの型とその留意点】

 

 

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