【遺留分とは?】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第37回目となる今回のテーマは【遺留分とは何か?】です。


皆さんも相続や遺言にまつわるキーワードとして【遺留分】という言葉だけは聞いたことがあるのではないでしょうか?

故人が遺言書の中で【他の相続人の遺留分に配慮せずその財産分けの意思が偏る】と相続人間の揉め事の種になる・・・といった話も壮年期以降の方々なら聞き及んだ事もあろうかと思います。

では、この【遺留分】とは、実際どの様な権利なのでしょうか?


遺留分】とは読んで字のごとく、対象となる方に【遺され留まっている(財産の)取り分】と言える個々人の権利となります。

遺言書の中で示される【指定相続分】は【法定相続分】よりも優先されるため、当該遺言書内容が他の相続人の【法定相続分】を超えた財産分けの方針ならば、その遺言書内容の通りに相続がなされる事となるでしょう。(相続人間の合意で異なる財産分けも可能ではありますが。)


しかし、その遺言書内容が他の相続人の【遺留分】を超えその権利を侵害するものであった場合は話が別です。上記のように、【遺留分】は対象となる相続人個々人に法律上認められた財産の取り分(【遺言書内容にかかわらず】)なのですから、自己の【遺留分】を侵害された方はその分の取り戻し請求が可能となります。


遺言書】作成において【遺留分】の存在に配慮する事の重要性は正にこの点にあり、【遺言者】がどれだけ強い意思で【財産分けの内容を独自に指定】したとしても、【遺留分】を侵害された人がその分の支払いを相手方に求めれば(これを【遺留分減殺請求】といいます。)その相手方はこれに応じなければならず結果的に【遺言書の内容通りに相続が進まない】結末を迎えるかもしれないわけです。


確かに、【遺言者】の意思を汲み取り、たとえ自己の【遺留分】が侵害されていてもその通りに財産分けを行えば良いと考える(相手)方もおられるでしょうし、実際【減殺請求】をしない決断を選択するケースもあるでしょう。

また、【遺言者】側が【遺留分】を無視した【遺言書】を作成したとしても無効になるわけではないので、【遺言者の意思を尊重してくれるだろう・・・】という期待を前提として作成される方もおられるかもしれません。


しかし、余りにバランス感覚を欠いた遺言書】は【遺留分】をもつ他の相続人の方の気持ちを逆に硬化させる恐れもあるという事は言うまでもないでしょうし、そこから派生する相続人間の感情の縺れが【争族】というトラブルを生む事もまた事実であろうかと思います。

遺言書】作成は最終的に【遺言者の自由意思】に基づき行われるものですが、作成される際には少なくとも考慮事項の1つとしてこの【遺留分の存在を気に掛ける必要はあるでしょう。


次に、当該【遺留分】をもつ相続人の範囲ですが、それは 法定相続人のうちの【配偶者】・【直系卑属(子や孫)】・【直系尊属(父母や祖父母)】となります。

法定相続人であっても【兄弟姉妹】には【遺留分】がありませんのでこの点お見知りおき下さい。

また、遺産における【遺留分】の割合ですが、相続人が【直系尊属(父母や祖父母)】のみの場合だけ【法定相続分の1/3】であり、それ以外は【法定相続分の1/2】となります。


実際に【遺留分】の減殺請求をする(侵害された分を取り戻す)には、【相続開始および返還すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内】に他の相続人(または受遺者や受贈者)に対して減殺の意思表示をしなければなりません。

この意思表示は家庭裁判所を介し行うものではなく、郵便局で取り扱っている「内容証明郵便」を使い相手方に通知するなどの方法で行います。「内容証明郵便」はどこの郵便局でも取扱いしているわけではないので、その点の事前チェックと利用料金確認を忘れないようにしましょう。


遺留分侵害に関連するトラブルは、最終的に調停や訴訟に発展してしまう恐れをも孕んでいる大変デリケートな事象ですので、少なくとも【遺言書作成を検討されている方においては、【遺言書】作成だけに留まる事の無い【遺言書が実現される為の周囲の環境整備】にも心を尽くす必要があるのではと思います。

関連URL:【遺言書作成前のステップ①】【遺言書作成前のステップ②】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください