【特別な手続きを経る相続ケース③】

前2回に引き続き、今回のテーマも【特別な手続きを経る相続ケース③】です。


④【海外移住者

一昔前と比べ、外国人の方との婚姻や、お仕事での転勤等で【海外移住】される方は多くなって来ました。これらの方々が相続人となった場合の遺産分割協議と相続手続きには特段の注意が必要となります。

日本国内に全相続人がおられるケースでは、皆さんお住まいの市町村に住民票を登録し、印鑑登録を済ませているでしょうから遺産分割協議における【押印の真実性】として【印鑑登録証明書】を添付する事は別段難しい事では無いでしょう。

しかし、【海外移住者】が相続人となる場合、海外へ住民票を転出する手続きをする事で、以前に日本国内の市町村に住民票を登録してあった事を前提とした【印鑑登録証明書】の発行が出来なくなるといった問題を抱える事になります。

つまり、たとえその【海外移住者】である相続人の方が遺産分割協議書に署名と押印をしても【印鑑登録証明書】を添付できない状況ではその先の手続きへ移行できないという事態に陥るのです。

では、このような時にはどうすれば良いのか?・・・解決方法としては2つ考えることができます。


④ー1【現地の日本領事館】で【サイン証明】を発行してもらう。

日本ではお馴染みの【押印】文化ですが、海外においてはごく少数の国々でしか採用されていません。皆さんご存知の通り海外においては【サイン】による本人証明が一般的です。その【サイン】が【本人が署名したもの】であると在外公館側が公的に認めた書面が【サイン証明】になります。

この【サイン証明】を発行してもらい、【印鑑登録証明書】の代わりに遺産分割協議書に添付すれば、手続きを先に進める事が可能となります。

ただし、この【サイン証明】発行には少々留意すべき点が存在します。

それは、発行を領事館に求める際、方法として2種類【④ー1-1署名のみを単体で証明するもの(これは印鑑証明書の様に1枚の書面として独立したものになります。)】と、【④ー1-2署名押印が必要な書類そのものを領事館に持ち込み、領事の前でサインをし、加え証明書をも発行してもらい一つにまとめ割印をするもの】があり、日本国内で行う各相続手続きの機関によって提出を求められる様式が異なる可能性があるという点です。

その為【サイン証明】を発行してもらう前には、現地領事館と日本国内で手続きを行う事になる各機関(預金関係では銀行、不動産関係では管轄法務局等)へあらかじめ連絡をし、どのような形にすれば良いのか?(必要タイプ、枚数等調整をつけておく事が必須となります。

また【④ー1-2】による【サイン証明】が必要な場合には、実際【遺産分割協議書】を【在外公館へ持参】しなければならないので、【紛失】しないよう気を配る事も求められます。

関連URL:【外務省HP:在外公館における証明】http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000554.html


④ー2【現地の日本領事館】で【印鑑登録証明書】を発行してもらう。

外務省のHPにおいては専ら【サイン証明】の方が詳しく載っているのですが、よく見てみると【サイン証明】【申請時の留意点内(備考)欄】に【印鑑登録証明書】の発行も取り扱っているとの記載があります。

つまり、在外公館においても事前に問い合わせをし、必要書類を取り寄せ申請する事で【印鑑登録証明書】の取得が可能という事なのです。

こちらの選択肢を取られた方の注意点としては、【日本の最終住所地の住民票の除票あるいは戸籍の附票】を在外公館に添付書類として提出しなければならない事と、発行手数料が幾らになるのかの確認となるでしょう。

また、外務省HP内に【サイン証明】と同等の形で【印鑑登録証明書】の発行についての説明がなされていない事を鑑みれば、在外公館の状況によっては受け付けてくれるか分からない可能性も残されているかもしれないので、【サイン証明申請以上に現地在外公館との連絡調整が必要になると思われます。


上記④は【押印の真実性】確保の為の書面として【サイン証明】又は【印鑑登録証明書】の発行を在外公館に求めるケースのご説明でしたが、相続手続きにおいて必要となるもう一つの書類が【住民票】です。


その【住民票】にかわるものとして、現地在外公館に発行、してもらう書面が⑤【在留証明書】となります。

この書面を発行してもらう為の注意点は、【日本国籍を持っている事】(日本国籍離脱の場合は例外的に【居住証明】での対応がなされる事も)や【現地居住期間要件(既に3か月以上滞在)】、【原則本人のみ申請可能】・・等になるでしょうか。いずれにせよ、【サイン証明】との同時申請が最良のタイミングですのでお忘れのないようにして下さい。


第15~17回に渡り【特別な手続きを経る相続ケース】をテーマにお話しして参りましたが、申請そのものでは無く【管轄あるいは担当機関との連絡調整】に煩雑さとテクニカルな要素があるものばかりですので、該当事案に直面した場合には無理する事無く専門家に頼る事が最善の策と言えるでしょう。

関連URL:【特別な手続きを経る相続ケース①】 :【特別な手続きを経る相続ケース②】

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