【遺言書作成前のステップ②】

皆さん、こんにちは。神奈川県行政書士会、南港南支部所属の近田知成です。

記事投稿第72回目となる今回のテーマは、だいぶ前にご紹介致しました 【遺言書作成前のステップ①】 の続き②編です。


前回からかなりの時期が開いていますが、①編では、遺言書作成前の【ご自身の資産状況の把握】が大切である点ご紹介致しました。

資産情報は、主に【不動産・預貯金・動産・権利関係】に分類され、証明書と共に情報を集約する工夫も必要となります。

この部分を先ずもって確認すれば、その後の遺言書作成段階で【整理された正確な情報】として文面に記載する出来ますので、有用な事前作業といえるでしょう。

(※ 現状、遺言書に掲載する資産をこの段階で確定したとしても、その後の生活の中で【資産の増減】が起こって、作成した遺言書との整合性が図れなくなるのでは・・・?との疑問が浮かぶかもしれません。

しかし、この点については【作成後のメンテナンス】(【遺言書のメンテナンス】についてはいずれ別の記事の中でご紹介していきたいと思います。)で対応可能となりますのでご心配なく。)


①【資産の確定】を終えた後に行う次のステップは・・・

②【人の情報を集約する】事です。

具体的には、【遺言書内で財産を渡す相続・遺贈等】、【その遺言書の存在で影響を受ける方】をご自身で認識することが挙げられます。

上記の2つを認識するためには・・・

②-1【推定相続人】・②ー2【推定相続人以外で財産を渡したい方】・②ー3【遺言書の存在で財産上・心理上プラスorマイナスの影響を受ける可能性のある方】に大きく分類し、【頭の中で整理してみる事をオススメします。

(※ 紙やデータベースとしてこの情報を記録してしまうと、秘密保持的に問題が出る恐れも考えられますので、今回はあくまで【ご自身の頭の中で想定・認識する】に留める方が無難です。)


②ー1【推定相続人】ですが、主に【ご家族(配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹)】がその中心となり、ご自身の家族構成如何により、甥や姪、孫まで範囲は及びます。

②ー2【推定相続人以外で財産を渡したい方】については、例えば【介護を長きに渡って行ってくれた義理の娘】や、【忘れ得ぬ恩義があるご友人】・・等がいれば想定していきます。

最後に②ー3【遺言書の存在で財産上・心理上影響を受ける可能性のある方】ですが、②ー1【推定相続人の中で、ご自身が残そうとする遺言書内容により、【相続人として財産の取り分が多くなる人少なくなる人】そして、その事実により【心情的に喜びや安心を得る人、対して怒りや悲しみ、不満を抱く人】・・・に分類して考えるのが良いかと思います。


これら②の分類は余りに【シンプル】で基本的な事柄でありながら、遺言書作成の目的に直結する非常にデリケートな部分でもあるので、作成者側として『敢えて深く掘り下げる必要はない』と考える方もおられるかと思います。

また実際に多くの場合、作成者側として【財産を残したいor渡したい方ばかりに意識が向く傾向があるのも事実です。

自身亡き後ご心配な事情があればこそ、遺言書を作成しよう!とするモチベーションは高まる訳ですからそのような傾向が見られるのも致し方無いかもしれません。

しかしながら、その遺言書内容の【実現】には財産の取り分が目減りしたかもしれない他の相続人の方々の協力が不可欠となります。

相続にまつわる様々な手続きの中で、遺言書を中心としたものであっても、それらの相続人の方々との円滑なコミュニケーション進行のキーとなる事に変わりはありません。

そうであるからこそ、自身亡き後の【相続人間の関係性を想像して】一度、遺言書作成者側で【その遺言書に関わる人々の心理面を含め全ての要素】を認識してみる過程が大切となります。

ご自身で良かれと思って作成した遺言書が、後に思いもよらない相続の火種】とならないような工夫が求められる点お見知りおき下さい。

関連URL:【遺言書と遺留分の関係】 :【遺言書って本当に必要?】

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