【遺言書による寄付】

皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区にて活動中の行政書士、近田知成です。

記事投稿第76回目となる今回のテーマは【遺言書による寄付について】です。


遺言書は自身の生前の最終意思として、法律で定められた事項を残された方々に伝え、その意向を汲み取ってもらう為のものです。

財産の種類が複雑で【争族化】が予想されるケースにおいて、事前の策的に作成しておく方や、ご自身亡き後【独り身となる配偶者の生活を案じ】作成を決断される方等、遺言書作成理由は様々ですが、その作成の根底には【意思を伝えておきたい(特定の)個人】が存在する場合が多いかと思います。


しかしながら、この遺言書作成(意思をつたえる)の相手方必ずしも個人】でなければならない訳ではありません。

また、意思を伝える相手方が【個人】ではあるものの最終的に叶えたい【願いの相手方】が自然人ではないケースもあり得ます。

今回次回の記事では、この2ケースの遺言書作成について要点と共にご紹介していきたいと思います。


先ず1つ目の【意思を伝える相手方が自然人でない場合】ですが、多く遺言書が【配偶者や子供、孫、親戚、兄弟、友人・・・等】に対し遺言者側から相続・遺贈の意思を伝えておく目的で作成作成される事は周知の事実だと思います。

家族中が良好であっても、被相続人の方が【かすがい的存在である場合、その方の死後、相続人間で思いもよらない揉め事が表面化する可能性もあり遺言書作成により先手を打ち家族仲の安定維持を図る】事には大きな意味があると言えます。

しかし、何もこれらのような【残される家族への配慮ばかりが遺言書作成の目的ではありません


特定の人に対する想いから、ご自身の死後においてもなお叶えたい願いがある、このような遺言書作成目的が存在するのと同様、誰か特定の人ではないものの、自身の【考えや価値観に由来する【事柄への想いを強く抱いておられる方が、遺言書という形で、生前の意思を示す事もまた、立派な作成目的となります。

例えば・・・長きにわたり病を患っている方が、『ご自分の病をもっと広く一般社会に知ってもらいたい。』という想いから、当該【病の啓発団体等に寄付をする】といった型の遺言書を残される方もおられます。

また、様々な【慈善事業や保護団体の理念に賛同され、遺言書にて寄付をしたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。


特定の個人に対する財産承継ばかりで無く、先の例のような願いを叶える為にも活用できる点が、遺言書の大きな特徴と言えます。

遺言書で寄付をする】・・・この目的を実現するには、幾つかのポイントを踏まえ作成段階に入る必要がありますので、下記にてご紹介致します。


ポイント①【寄付先窓口で遺贈を受ける意思があるか否かを確認する

遺言書で寄付】をする場合、【遺贈】という形で相手方に財産を贈る事となります。

幾ら遺贈者側遺言書作成側)が強い想いを持ち財産を譲り渡そうとしても受贈者側寄付先)に受け取る意思が無ければ意味がありません

その為、実際に遺言書を作成する【前に】、先方に【遺贈を受ける意思があるかどうか?】を確認する必要が出て来ます。

最近では、寄付についての相談窓口を設けている団体も少なくありません。上記のような疑問点を洗い出す為にも、事前に寄付先の考えを知っておく事が大切です。


ポイント②【寄付対象財産は現金資産か不動産か?

譲り渡す財産が【現金資産】であるならば、対象財産金融機関名、指定口座名、口座番号、金額等を遺言書文中に明記する事で比較的スムーズに手続きは進むと思われます。

問題となるのが、【不動産】を寄付する場合で、このケースでは、遺贈の相手方である受贈者の【団体名義】で所有権移転登記する必要があります。法人格を持つ団体ならば良いのですが、法人格のない団体となると【代表者個人名義】での登記となり、権利の帰属先が不明瞭になる恐れも考えられます。

この点も踏まえ、事前のリサーチが必要となるでしょう。


ポイント③【遺言執行者を指定しておく

遺言執行者は、遺言者亡き後実際にその遺言内容を実行するです。

遺贈の型をとる場合、信頼に足る人物を遺言執行者として定めておけば手続遅滞防止になります。(遺言書の文中に明記しましょう)

遺言執行者の手続きは、たとえ相続人であっても妨害する事は出来ません

叶えたい願いがあるならば、作成時に指定しておく事をお勧めします。

関連URL:【遺言執行者とは?】


ポイント④【(ご家族がおられる場合)出来る限り了承を得ておく

ポイント③で申し上げた遺言執行者指定のメリットとは別にして、ご家族がおられる場合には、【ご自身の理念をしっかりとお話しておくべき】かと思います。

遺言執行の段階にて、ご家族の方から寄付先にクレーム等がなされては元も子もありません

残された家族にとって、実際上相続財産が生活の糧ともなる場合も踏まえ作成者側としては相応の配慮が望まれるところです。


以上4つのポイントが【遺言書による寄付】の(代表的な)注意点となります。

ご家族に向けての遺言書作成に比べて、幾分テクニカルな要素も含むのがこの【寄付】を目的とした遺言書となります。

その為、作成にあっては【十分な文面内容の検討】と【寄付先への事前リサーチ】が求められる事となるでしょう。

関連URL:【遺言作成の適齢期】 :【遺言書にかける事って何?】

【遺言書って本当に必要?】【お問い合わせ】

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