皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。
記事投稿第56回目となる今回のテーマは【自筆証書遺言:制度改正について】です。
第53回記事でご紹介しました【自筆証書遺言の検認手続き】は来年1月13日施行となる改正相続法の中でも従前どおりの制度運用となりますが(※保管先において下記にご紹介する『法務局』を選択した場合は異なります。)、当該自筆証書遺言の改正点については①【自筆によらない財産目録添付】②【自筆証書遺言の保管先】と大きく2つの制度改正がなされ、これから自筆証書遺言作成を検討されている方にとっては知っておいた方が良いポイントとなりますので、今記事の中でお話していきたいと思います。
関連URL:【自筆証書遺言【検認】とは?
まずポイント①【自筆によらない財産目録の添付】」ですが、従来自筆証書遺言はその【全文】において【自分の字で書き記す】事が要件であり、財産部分を当該遺言書の中で表す際もやはり同じく自身で書いた文字により記す必要がありました。
つまり、この【財産部分を書き記す】という点については、例えば不動産ならば法務局で登記事項証明書を請求し、そこに載せられている事項を間違える事無く転記する等、特にご高齢の方にとってはいささか負担になる行為を伴うのが現状でした。
この点は比較的容易な型で遺言を遺すことが可能である自筆証書遺言のメリットに対するマイナス要素として存在し、自筆証書遺言作成を躊躇させてしまう一要因ともなっていた感もあります。
今回の制度改正により、煩雑さを伴う上記のような【財産部分の表記】については自筆によらずとも【パソコン作成による別紙財産目録や預貯金ならば取引先金融機関通帳コピー等】を遺言書に添付すれば足り、財産部分記載に余分な気を使わずとも作成が可能となります。
ただし、当該財産目録用に添付した証明書類についても【(遺言書)本文部分とは別に】【遺言者の記名押印】が必要となる点には気を付ける必要があり、この記名押印過程を経る事で偽造防止にもなるので忘れずに行うよう心掛けましょう。
次に、②【自筆証書遺言の保管先】についてですが、従来自筆証書遺言においては【作成をしたものの(相続人等に)発見されずに見過ごされるケース】があり、【(自筆証書遺言の)存在を如何にして知覚してもらうか】という点に対する遺言者側の配慮が必要でした。
遺言者として【遺言執行者をその遺言の中で指定】をしておき、当該遺言執行者に保管を依頼する型を取る事でこの問題への対策とする方もおられるでしょう。
しかし、上記のような対策を講じる事無く、もし【遺産分割協議がなされた後に自筆証書遺言が発見】された場合には相続トラブルの芽が出て来る可能性も考えられます。
何故ならば、原則として遺言書がある場合【遺言者の生前の意思が尊重】されますので、遺言の存在や内容を知らずに行われた遺産分割協議は無効となってしまう結果を招き、そうなると遺言内容確認を経ての再協議等も検討しなければならず・・・相続人にとっては時間的にも心理面においても多大な労力が必要となるかもしれないからです。
また、発見が遅れる又は発見がなされないという点のみならず、発見者によりその内容を改ざんされたり、廃棄や隠匿が行われる可能性をも内包しているのが【自筆証書遺言の保管の難しさ】と言えます。
このような複数の懸念点を踏まえれば、自筆証書遺言がある相続においてその【(自筆証書遺言)存在の把握】は正に相続手続きを円滑に実行するためのターニングポイントとなるのではないでしょうか。
今回の制度改正の中ではその対応策として、【公的機関で自筆証書遺言を保管する】制度を創設し、その保管先機関として【法務局】を選択、申請を行う事で自筆証書遺言の【原本保管】と【画像をデータ化】する運びとなりました。
加え、被相続人の死亡後相続人からの閲覧・写しの交付請求が可能となり、相続人の1人から閲覧・写しの交付請求がなされた場合には他の相続人に対しても遺言書が保管されていることを通知する等、その【存在把握の円滑化】が図られる事となります。
そして、当記事の一番最初に申し上げた【検認手続きは現行通り】という点についてもこの【法務局への保管申請を行った場合】には必要がなくなり、別途【検認手続き】に時間を割く事もありませんので、事前に【法務局への保管】を遺言者側で選択しておく事が【相続人等の手間を省く配慮】に繋がろうかと思います。
今回は【自筆証書遺言の法改正点】についてご紹介してきました。当記事で扱った2点の改正は①【自筆によらない財産目録添付】においては2019年1月13日より、②【自筆証書遺言の保管先(法務局による保管)】においては、2020年7月10日よりの制度運用となりますので、ご留意頂ければと思います。
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