【遺言書にまつわる疑問①】

皆さん、こんにちは。神奈川県 横浜市 南・港南支部所属 行政書士 近田知成です。

記事投稿第31回目となる今回のテーマは【遺言書にまつわる疑問】についてです。


ご自身亡きあとの相続人間トラブルを未然に防止すべく、明確な意思を持ち【遺言書】を用意されるおつもりの方、また、漠然とではあってもその作成をご検討されている方は多くおられると思います。

今回は【遺言書作成検討の初期段階での疑問について幾つか紹介致しますのでご参考になさって下さい。


疑問①【夫婦共同での遺言は有効か無効か?

ご夫婦で【遺言書】作成を考えた場合『2人で1つの書面の遺言書を作れないだろうか?』と思案されるかもしれません。しかし、そのような【夫婦共同遺言】は法律上無効とされており、たとえご夫婦であっても個々人が【単独行為】として遺言書を作成しなければならない決まりとなっています。

遺言書】はその作成後、本人が自由に撤回】や【内容の変更】を行うことができるものです。作成の一方当事者が『撤回をしたい。』と思っても【共同で作成された遺言書】となってしまうと他の一方当事者との兼ね合いで様々な不都合が生じてしまいます

また、ご夫婦2人で作成ともなれば【どちらか1人の意見に自然と傾きがち】になり本当の自由意思としての書面にはなりにくいとの懸念も働きます。

このような理由からも【遺言書】は厳然たる【単独行為】として個人個人がそれぞれ作成する事が要件とされているのです。


疑問②【遺言書への押印は実印?認印?

遺言書】が法律上の効果を有するための要件として【押印】は必要不可欠なものです。【公正証書】で作成するのであれば【公証人のチェックが入りますから押印のし忘れが起こる可能性は皆無でしょうが、ご自身で作成する【自筆証書遺言】の場合は自ら注意力を持って事前に用意する等をし、忘れずに押印をしなければなりません。

では、その【押印】については【どの印鑑を使えば良い】のでしょうか?

答えとしては、【実印(印鑑登録済のもの)】・【認印、三文判(普段から使っているもの)】いずれにおいても有効であると言えるでしょう。しかしながら、【遺言書】の【法的な性格】を考慮すれば、【実印による押印がベストである事は言うまでもありません。

また、指に朱肉を付け押印する【拇印】は本人のものであるかの判別が難しくなる可能性もありお勧めする事はできません。もちろん、赤ペン等で【〇の中に苗字を書くサイン】では全くその要件を満たしていないので実行する事のないようお気を付けください。


疑問③【自分で字を書くことが困難な場合はどうする?

様々な理由(ご病気により手を動かすことが難しい、指が震える、字が上手でなく人に見せたくない・・・等)で【文字を書くことを躊躇されたり、実践することが困難】な方もたくさんおられると思います。

しかし、かと言って他の人に代筆を頼むわけにもいきません自筆証書遺言は【自書】が要件です)し、添え手をしてもらい作成するというのも【本当にご本人の意思で書いたのか?】との疑義が生じ偽造等の問題すら生じかねません。

これらの方はどのようにして【遺言書】を用意すれば良いのでしょうか?

考えられる方法としては、【公正証書遺言】を【公証人】に作成してもらう型を選択するという事です。

公正証書遺言】であるならば、遺言書自身は【口述(相手に話す)】だけですので筆記をする必要はありませんし、書面化するプロセスは【公証人】が担当してくれますので安心です。

上記【書くこと】への悩みをお持ちの方は、闇雲に【自筆証書遺言】作成を実践するより、【公正証書遺言】作成を検討されてみてはいかがでしょうか。


疑問④【自筆証書遺言で複数枚になった場合はどうする?

自筆証書遺言】を作成する際、書き残しておくことのないよう様々文面に盛り込んだ結果、【複数枚】になってしまった場合どのようにすれば良いのでしょうか?

自筆証書ではその保管についても原則【ご自身で行う】のが基本となります。少なくとも1枚1枚がバラバラにならないようホチキス止めをし、封筒に入れておく事が必要でしょう。

また、封筒裏面には【開封してはならない旨・被相続人の死後すみやかに家庭裁判所の検認手続きを受ける旨】を記載し、厳重に保管しておきます。

更に、偽造防止の観点から有用なのは【数枚に渡る書面が一連のものであると証明する為に】【遺言書に押した印鑑と同じ印鑑で】【紙の綴り目に契印】を押すという方法です。また、【遺言書を入れた封筒にも同じ印鑑で押印】すればなお良いでしょう。

また、【自筆証書遺言】は後に【本当に本人が書いたものなのか?】との疑義が持ち上がる可能性もありますので、【印鑑登録証明書を一緒に保管】したり、【遺言書とは別の手書き文書を用意】し、筆跡鑑定に備えたり【遺言書の法的効力を確たるものにする工夫に知恵を絞る事も大切と言えます。

*【自筆証書遺言の保管について】は相続法改正により【新たな保管制度の創設】がなされる予定です。この点については別記事で記述していこうと思います。


次回も引き続き【遺言書にまつわる疑問】をご紹介して参ります。

関連URL:【遺言書にまつわる疑問②】 :【遺言書作成前のステップ①】

【遺言書作成前のステップ②】 :【遺言作成の適齢期】

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