皆さん、こんにちは。神奈川県横浜市港南区にて活動中の行政書士、近田知成です。
記事投稿第79回目となる今回のテーマは、【遺言書を活用した配偶者の生活保護】です。
ご自身が亡くなられた後に、【配偶者の方がどのような生活を送ることになるのか】は、重大な関心事となります。
この事項への関心は、Ⓐ【夫婦で生活を営みお子さんのおられないご家庭】も、また、Ⓑ【お子さんは既に独立し、今現在ご夫婦で生活をしているというご家庭】も同様にお持ちになるのではと思います。
関連URL:【遺言書作成をお勧めするご家庭ケース】
ただ、これらの【漠然とした心配】は持っていても、遺言書を作成してまで事前の策を講じておく方は依然として少数派であると言わざるを得ません。
おそらく、遺言書にて明確な意思を残しておかずとも、【周りの人たち(配偶者以外の推定相続人)と上手く話し合いをしてくれれば良い】とお考えの方が多くおられる証左であると思われます。
実際、常日頃から【独立をしたお子さん達】や【(推定相続人)となり得る親戚(例:義父母・義兄弟)の方々】と円滑なコミュニケーションを取り続けているご家庭では上記のような考え方に一定の心的な保証が加えられるかもしれません。
しかしながら、【年に数回電話での会話をする程度】、【もう何年も顔を合わせ話もしていない】・・・といったケースでは、【お互いの考えや価値観、現況の把握】でさえ試みる事が困難な場合があります。(この状況は特に【親戚】の方々との関係で見受けられるでしょう。)
増して、【財産承継が絡んだ遺産分割協議】ともなれば、お互いの経済的基盤の違いから利害が一致せず、コミュニケーション不足も相まって一気に【紛争】へと加速する恐れも考えられます。
一方、【独立をしたお子さん達】もそれぞれ所帯を持ち、その経済状況や家庭環境も様々ですので、一概に【我が親の生活を一番に考えた(相続上の)選択をとれない】可能性も出て来ます。
巷で語られる【配偶者と義父母】、【配偶者義兄弟】、【配偶者と甥姪】、そして【配偶者と子】の相続をめぐる問題は、最早取り立てて珍しいものでは無く、誰にでも起こり得るものとの認識を持つ必要があると言えるのではないでしょうか。
【残された配偶者の生活を第一に考えた遺言書】は、【法律に定められた形式】により確実に残す事で、配偶者が他の相続人と行う遺産分割協議に先駆けた予防策となり得ます。
もし、上記のような主旨を示す遺言書の作成をお考えであるならば、以下のポイントに留意して頂く必要があろうかと思います。
先ず、前段階として、【配偶者と義兄弟の方々とが相続人となる場合】のポイントについてです。
この状況において大変重要となるのは、【配偶者に全財産を単独相続させる】旨の遺言書を【残す事】そのものの持つ意味に着目する事です。
法律上【兄弟姉妹に遺留分はない】と規定されていることから、例えばⒶ【夫婦で生活を営みお子さんがおられない家庭】で【配偶者以外の相続人が兄弟姉妹】の場合、この遺言書を残しておけば、その遺言書内容の通りに【配偶者に全財産が承継され】、兄弟姉妹との遺産分割協議が不必要となります。
関連URL:【遺留分とは?】 :【遺言書と遺留分の関係】
この事実は【残される配偶者】の方にとって極めて大きなメリットと言え、当該主旨の遺言書があると無いとでは状況がガラリと変わる事を意味します。
作成者側として、その重要度をどれだけ真剣にとらえているのかが問われる部分とも言えるかもしれません。
次に、Ⓑ【お子さんは既に独立し、今現在ご夫婦で生活をしている】場合の上記主旨とした遺言書作成のポイントです。
この場合Ⓐとは違い、たとえ遺言書の中で【配偶者に全財産を単独相続させる】と示したとしても、【子供達には遺留分がありますので】、子供達がその最低限度の相続割合の権利を主張すれば、配偶者がその全てを承継する事は出来なくなります。
その為、作成者側としては、【いかに配偶者の今後の(自身亡き後の)生活を心配しているか】を真摯に訴える必要が出て来ます。
間違っても【子供達はもう独立して生活を営んでいるのだから、私が残す財産なんて必要ないだろう・・・。】との考えは持たない方が良いでしょう。子供としては【自身が軽んじられているのでは!】との反感を逆に買ってしまう恐れがあります。
子供達が自身の遺留分を主張して争うとなれば、配偶者のみならず、子供達も含めた家族関係に多大な影響が出てきます。
作成者側は偽らざる思いを相手方の心情に訴えかけ、【遺留分の主張をしないでほしい】との願いに同調してもらわなければなりません。
その文面にて完全なる保証(遺留分を主張しないとの)を得る事は出来ませんが、例えば・・・『私の生活は良き理解者であるお母さん(お父さん)の協力があってはじめて成り立ってきたものである』のような文面であったり、また、『子供達は皆独立し、それぞれ立派に生活を営んでいる。相続財産は母(父)亡き後は全て相続人である子供達が相続する事も考慮してもらいたい。』等の【相手の心情に訴えかける】文言にて【付言事項】を構成する事が大切となるでしょう。
関連URL:【遺言における付言事項】
そしてⒶ&Ⓑ双方の場合において、共通して必要となる【遺言書作成のポイント】として・・・
①【相続させる旨の遺言書を作成する】
関連URL:【相続させる旨の遺言について】
②【遺言執行者を指定しておく】
関連URL:【遺言執行者とは?】
③【相続財産は明示して列挙し、文面に載せる】
明確になっている財産部分は、明示して文面に載せ(例:不動産登記簿を参照して該当不動産を記述)、+『その他一切の財産』と記入する事で不明確な財産部分を補完する等の工夫をするようにしましょう。
※財産目録部分の表示方法は、改正相続法の大きな変更点の1つですので、また別の記事にてお伝えしたいと思います。
【配偶者の生活を安定的なものとする】為の遺言書活用は、作成ケースとして代表的な例と言えます。ご心配事をクリアーにする点に着目すれば、【作成者側にも大きなメリットがある】と言えるのではないでしょうか。
関連URL:【遺言書作成前のステップ①】:【遺言書作成前のステップ②】
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